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“社員契約”だった無名のルーキーが大黒柱のキャプテンになるまで。いわきFC・山下優人が歩んできた4年間の軌跡

2023.06.06

今シーズンから戦うステージをJ2リーグに変え、よりシビアな日常に身を投じているいわきFC。そのチームでフル出場を続ける27歳の大黒柱が、ダブルボランチの一角で存在感を示す山下優人だ。そんな彼も2019年にこのクラブへ加入した時は、働きながらプレーする“社員契約”選手。チームの中にいたプロ契約の選手を仰ぎ見るような立ち位置だった。あれから4年。確実にその名前を知られるようになりつつある山下の辿ってきた“過程”を、福島民友新聞のいわき番である小磯佑輔が丁寧に振り返る。

J3ベストイレブン、リーグ戦フル出場の絶対的な大黒柱

 キャプテンながらすすんで表には立たず、チームを影から支える。派手さはないが、黙々と役割をこなす、そのプレースタイルに選手やサポーターは勇気付けられ、その背中を追う。

 山下優人の活躍を抜きに、クラブが成し遂げてきた躍進を語ることはできない。優勝でJ3昇格を決めた2021年シーズンのJFLでMVPを獲得。昨シーズンはキャプテンに就任し、J3優勝に貢献。ベストイレブン入りも果たした。先発フル出場は21年シーズンから途切れておらず、今季も鉄人ぶりは健在だ。27歳のMFは文字通りチームの大黒柱に成長した。

 今でこそ順風に見える選手生活も、振り出しは厳しいものだった。山下が入団した時のチームは東北社会人リーグ1部に所属しており、山下はプロ契約ですらなかった。選手の入れ替わりが激しいこともあり、現在のチーム内で当時の状況を知るのは山下のみ。目立たなかったアマチュアの選手からJ2入りしたチームのキャプテンへと駆け上がった、山下の4年間を振り返る。

「のし上がる覚悟」を持って入団した4年前の決断

 いわきが山下を初めて見たのは2018年のデンソーカップだった。桐蔭横浜大の3年だった山下は、関東選抜Aの一員としてプレーしていた。いわきの強化部の平松大志は、当時の山下についての印象をこう語った。

 「ヤマ(山下)は[4-3-3]のアンカーで『セカンドを拾ってさばく』みたいなプレースタイルだった。上手くバランスを取りながら(次のプレーを)予測し、セカンドボールを回収する。ミスも少ない。目立たないけど良い選手だと感じた。でも、いわきは当時、東北2部。そんなチームが声をかけて来るような選手ではなく、もっと高いレベルで活躍する選手だと思った」

 「その後、関東選抜のメンバーがプロになっていく中、ヤマがプロになれていないと知った。『決まってないらしいぞ』ということで獲得に動き出し、練習に呼んだ。話した時の印象は、とにかく暗かった(笑)。ただ、芯がしっかりしていて、考えを言葉にする。それは今も変わらない」

 山下は覚悟を決めた。大卒でのJリーグ入りの道を諦め、いわきへ入団する。

 「なるべく上でやりたくて悩んだが、時間も選択肢もなかった。(大学の同期の)村上佑太がアナリストとしていわきにいて、村上からは『これから絶対上がってくる可能性のあるチーム』と聞いていた。『それなら行かせてほしい』と。クラブに可能性があり、フィジカル面、栄養面のサポートも大きい。『ここからのし上がっていきたい』と思った」 

“社員契約”と予期せぬ大ケガ。Jリーグに上がるまでの2年間

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いわきFC山下優人

Profile

小磯 佑輔(福島民友新聞社)

1996年1月生まれ。大学卒業後の2020年、福島民友新聞社に入社。翌21年にいわきFCの担当記者となり、2度の昇格を取材した。小中高時代は打つより投げることの好きな野球少年。大学時代にサッカーの面白さに出会って以来、毎週の海外サッカー観戦を欠かさない。

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