最終節、引き分けに終わり11シーズンぶりとなるリーグ優勝を逃したものの、絶対王者バイエルンを土俵際まで追い詰めたドルトムント。シーズン後半、勝ち点を積み重ねたチームの戦術的特徴とあと一歩足りなかった部分がどこにあったのか、とんとん氏が分析する。
試合終了のホイッスルと同時にピッチの選手は崩れ落ち、シグナル・イドゥナ・パルクは大きな落胆に包まれた。2位バイエルンに勝ち点2ポイントリードで迎えた最終節マインツ戦を引き分けで終え、バイエルンのブンデスリーガ11連覇阻止、つまりはブンデスリーガ優勝を逃してしまった。
今シーズンは、王者バイエルンが迷走する。ロベルト・レバンドフスキという絶対的エースの退団の影響を乗り越えたかに見えた矢先、ユリアン・ナーゲルスマンを突然解任。新監督にトーマス・トゥヘルを迎えるも、国内外カップ戦での敗退に加え、リーグ戦でも勝ち星を幾度となく落とすこととなった。
ドルトムントにとってはまさに、マイスターシャーレを掲げる千載一遇のチャンス。それを逃したのだから、落胆するのも無理はない。
とはいえ、彼らは序盤から優勝争いを演じられる位置につけていたわけではなかった。W杯前までのリーグ戦で8勝1分6敗、首位バイエルンと9ポイント差の6位に沈んでいたのだ。優勝にはすでに黄色信号が灯ったとも言える状況であった。
しかしW杯明けは15勝4分1敗。バイエルンに9ポイントもの差をつける成績を残し、驚異的な巻き返しを見せた。彼らの中で変化が起きたのは明白だ。では、その変化とはどのようなものであったのか?
不屈の男がもたらした攻撃の新オプション
W杯前後のドルトムントの変化は、得失点数に如実に表れている。
W杯前:15戦25得点21失点
W杯後:19戦58得点23失点
この数字を見て明らかであるように、シーズン後半のドルトムントは攻撃力が大幅に改善。得点数は1試合平均1.67から3.05と、約1.4点も増えている。
この攻撃力改善において欠かせない要因となったのが、CFセバスティアン・アレの復帰だ。2022-23シーズン開幕前に加入したものの、精巣がんのため半年間チームを離脱。年明けから実戦復帰した不屈の男のプレーがチームにもたらしたものは、想像以上に大きかった。
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とんとん
1993年生まれ、長野県在住。愛するクラブはボルシアMG。当時の監督ルシアン・ファブレのサッカーに魅了され戦術の奥深さの虜に。以降は海外の戦術文献を読み漁り知見を広げ、Twitter( @sabaku1132 )でアウトプット。最近開設した戦術分析ブログ~鳥の眼~では、ブンデスリーガや戦術的に強い特徴を持つチームを中心にマッチレビューや組織分析を行う、戦術分析ブロガー。