
今季、開幕から低迷していた清水エスパルスの指揮を受け継ぎ、まさにV字回復させた仕掛け人、秋葉忠宏監督。昨季まで3年間率いた水戸ホーリーホックでの指揮ぶり、その“劇場ぶり”はJリーグのファン・サポーターにも広く知られるところだが、そのマネジメントの真髄とは何か。秋葉忠宏監督が率いた水戸ホーリーホックでの3年間を日々間近で見届けた水戸の番記者、佐藤拓也が当時を振り返る。
堅守のチームがリーグ最多得点を奪える攻撃型に変貌
昨季のJ1得点王や現役日本代表守護神などJ2で圧倒的な戦力を擁すことから、開幕前は「絶対的なJ1昇格候補」の呼び声が高かった清水だが、開幕戦で水戸とスコアレスドローに終わると、クラブワースト記録の開幕7戦未勝利で下位に低迷、大きく出遅れた。
そして、第7節終了後にゼ・リカルド前監督が解任され、コーチだった秋葉忠宏が後任に就任すると、第15節終了時点で8戦負けなし、直近2試合では大量得点で圧勝するなど調子を上げていき、前評判通りの力を発揮して上位に食い込んで行った。チームを生き返らせた秋葉監督とは何者なのか。
秋葉監督の代名詞は「超攻撃的サッカー」。水戸では「獰猛さ」という言葉を用いて、チームに攻撃的な姿勢を植え付けた。
水戸の就任初年度の2020シーズン。チームは9位という成績に終わったものの、リーグ最多の68得点を記録して見せたのだ。それは伝統的に守備を重視したチーム作りをしてきた水戸にとって、歴史的な快挙と言っていい。
秋葉監督就任前年にはリーグ2番目に少ない36失点の堅守をベースに過去最高の7位という成績を収めていた。そこから短期間でスタイルを転向することは決して簡単なことではない。しかし、秋葉監督はたった1年でチームを劇的に変え、攻撃的なスタイルを植え付けることに成功した。
「2019年に堅守を武器に過去最高の7位を記録したように守備はある程度整備されていた反面、意図的に攻撃の形を作ることや再現性のある攻撃を仕掛けることができていない、ということなどをクラブは課題として持っていて、そこを改善してほしいという要請を受けて監督に就任しました。だからこそ、まずは攻撃的に振り切って戦おうと思いました」
中途半端なことはしない。メーターを全開に振り切ってトライできる強さこそが秋葉監督の魅力だ。
「バックパス禁止」「ビルドアップには興味がない」の真意
そのために徹底したことが「バックパス禁止」。ボールを持った時、ボールを失わないことを意識しすぎると、横パスやバックパスが多くなってしまう。いい形でボールを奪ったとしても、そこで攻撃のテンポが遅くなってしまうと、相手に守備組織を整えられてしまい、ゴールに向かうのが難しくなる。個の能力が高いチームならば、それでも崩せるだろう。しかし、それまで守備を重視していたチームが攻撃的に戦うためにも、「バックパスを禁止する」という極端な方法で「前」への意識を植え付けたのだった。……


