徹底した地上戦、強烈なトランジションに大外アタックで迫るアル・ヒラルに対し、第1レグの再現を目指した浦和が見せた対応が流れを変えた。ACL決勝第2レグ分析
2022AFCチャンピオンズリーグ決勝、運命の第2レグはホームの浦和レッズが1-0で勝利。2戦合計2-1でアル・ヒラルを下し、2017年以来3度目となるアジアの頂点に立った。アウェイゴール分のビハインドを背負ったうえに中盤の主力が出場停止+負傷となったアル・ヒラルは逆転のためにどのような戦い方を選択したのか、それに対してリードを守る側となった浦和はいかなアプローチで対抗したのか。らいかーると氏が分析する。
第1レグにはいなかった選手が浦和の誤算に
天気は晴れ。サッカー日和だが、強風だった。 浦和のキックオフで始まった試合。浦和レッズはいきなり“仕込み”を見せるが、マリウス・ホイブラーテンのロングキックは精度を欠くものとなってしまった。止まっているボールを蹴るのに失敗するのは珍しいなと眺めていると、両チームともにロングボールの精度に苦しんでいるようだった。そう、強風である。特に前半、風下に立たされた浦和の腹はとにかく耐え忍ぶで決まっているようだった。なお、強風によって得することもあれば損することもあったので、両チームにとってはまさにお互い様のコンディションであった。 時間の経過とともに、第1レグと同じようで同じでないことを示したのがアル・ヒラルのカリージョだった。CBの間に移動するオタイフと比較すると、自由にボールを引き出す動きをするペルー代表MFを起点にアル・ヒラルは試合を組み立てていく。浦和は第1レグと同じように下りていく選手をスルーして前線の2枚で面倒を見ようとするが、この部分が浦和にとって誤算となる。 アル・ヒラルのビルドアップ隊に対して、興梠慎三と小泉佳穂が消耗戦を余儀なくされたのは前回と同じ展開だった。問題はカリージョからボールを奪えないだけでなく、ボールを離させることも容易にはできなかったこと。第1レグでは2トップの脇からボールを運ぼうとするアル・ヒラルの選手への献身的なプレッシングで、時間を限定した状態でのプレーに追い込んでいた興梠×小泉のコンビだったが、カリージョからボールを奪うコストは甚大であった。カリージョに他の選手まで引き寄せられてから展開される形は、浦和にとってジャブを連打されるかのような状況であった。 上手だけれどフィジカル的には軽いS.アル・ドーサリたちに比べ巧くて重いカリージョこそ、アル・ヒラルの本来の強みである球際勝負を象徴する存在だったのかもしれない。 カリージョが時間とスペースを周りに配っていく中で、アル・ヒラルの狙いが徐々に見えてくる。4分にはシンプルなセンタリングから西川周作がアル・ハムダンと交錯し、アル・ヒラルが決定機を迎える。ただし、アル・ヒラルは前線にロングボールを蹴っ飛ばしたり、シンプルなセンタリングを繰り返したりを狙っているわけではなかった。この判断は強風も多少は影響していたのかもしれないが、第1レグの内容を受けてのものだろう。…… 昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。Profile
らいかーると