好評発売中の『エコロジカル・アプローチ 「教える」と「学ぶ」の価値観が劇的に変わる新しい運動学習の理論と実践』は、欧米で急速に広がる「エコロジカル・アプローチ」とその実践メソッド「制約主導アプローチ」の解説書だ。
今回は本書の著者である植田文也氏に、FCガレオ玉島でのプロジェクトやアカデミーコーチングメソッドアドバイザーを務める南葛SCでの実践を通して見えてきたことを語ってもらった。
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理論から実践へ
――植田さんがスキル習得アドバイザーを務めるFCガレオ玉島はどういったクラブなのでしょうか?
「自分の大学院の同級生で、ヴィッセル神戸や鹿児島ユナイテッドなどでJクラブのコーチを歴任していた古賀康彦と自分で、エコロジカル・アプローチを導入した育成を行っていくクラブです。すでにある組織でいきなりエコロジカル・アプローチを軸にしていくのは簡単ではないので、自分たちでクラブを立ち上げようと模索し始めたのがきっかけです。古賀はもう岡山に住んでいて、無料体験会などで選手を集め、この4月から本格的に活動し始めました」
――カテゴリー的にはどこに属するクラブなんでしょう?
「4種のスクールだけです。3種はチーム登録はあるのですが、プレーヤーはゼロでした。ゼロからクラブを立ち上げようとしましたが、チーム登録や練習場所の確保の問題にぶつかりました。その時、幸運にもジュニアユースが休眠中のクラブが見つかり、エコロジカル・アプローチの話をスタッフさんにさせていただき、一緒に活動させていただくことになりました。新倉敷の水島コンビナートがあるエリアで、今は古賀が選手の募集含めて下地づくりをしている段階です。本格的にトレーニングが始まれば、僕も岡山に行こうと思っています」
――では、今の段階で実際にエコロジカル・アプローチのトレーニングを実施しているのは、アカデミーコーチングメソッドアドバイザーを務める南葛SCの方ということでしょうか?
「はい、そうですね。南葛SCは常駐ではないのですが、週1回でセミナーをやらせてもらったり、午後はトレーニングを見させていただいて、そのフィードバックをさせていただいています。日々変化していくので、ものすごく楽しいです」
GKトレーニングの発展性
――そもそもエコロジカル・アプローチとは何か、という座学をやりつつ、トレーニングを見てエコロジカル・アプローチの要素を入れていくアドバイスをするということでしょうか?
「あくまでもトレーニングを実施するのはコーチですが、短い時間でも明らかに指導の仕方や選手の反応が変わっていくのでやりがいがありますね。特に変化が大きいのはGKでした。GKのトレーニングはスキルドリルにならざるを得ないため、反復を通じた動作の安定性の学習に偏りがちなんですけど、それゆえに改善する余白が大きくて、練習に変化も現れやすいと感じています」
――確かに、GKトレーニングは制約を与えることがやりやすい気がします。本誌で植田さんに教えていただいたスモールサイドゲームの制約はボールを変えたりはすぐできますが、障害物を置いたり、コートの広さや人数を工夫するなど指導者にクリエイティビティが要求されるので、難しいなと内心思っていました(笑)。……
Profile
浅野 賀一
1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。