公式戦0勝2分5敗という年始の絶不調期を乗り越え、CLでベスト8に到達したミラン。その過程には頼もしい男の復帰があった。イタリア対決の準々決勝、ナポリ戦の第1レグ(4月12日)でもビッグセーブを連発し、ミランの1-0先勝に貢献したGKメニャンである。約5カ月間の負傷離脱を経て2月下旬に帰還した守護神がチームにもたらす影響力について、おなじみのミラニスタ、nato(@nattou2017)さんに綴ってもらった。
近年のミランは非常に若いチームである。補強方針もネクストブレイク候補を中心に狙うというものであり、市場価値が高まる前に獲得するからこそ、加入時点でいわゆるワールドクラスは基本的に存在しない。獲得してからさらに成長させる、その成長の先にチームの強化もある。そんな中で現在のミランには1人だけ太鼓判を押せる真のワールドクラスがいる。フランス代表でも守護神に昇格した27歳、マイク・メニャンだ。
ご存知の方も多いだろうが、ミランにはジャンルイジ・ドンナルンマ(現パリ・サンジェルマン)という若きGKがいた。イタリア人、ミランのプリマベーラ(ユースチーム)出身で、16歳でセリエAデビュー、17歳でイタリア代表デビュー。大きな特徴はシュートストップ能力の高さであり、そのパフォーマンスと年齢から向こう10年以上はチームの守護神を任せられる大器だった。生え抜き、若さ、実力者とプロフィールも完璧だ。ミランの象徴になれるはずの存在だった。
しかしドンナルンマの契約は20-21シーズン終了後に満了を迎える。クラブは必死に引き留めを試みたが失敗し、退団が正式決定。このドンナルンマの契約の歴史は、代理人を務めるミーノ・ライオラ(2022年4月に逝去)が巨額の年俸を要求し続けて以前から大荒れだったので、その点に不満を持っているファンは大勢いた。そしてこの退団により、不満は爆発した。去り方としてはクラブに8シーズンぶりのCL出場権をもたらす悪いものではなかったが、多くのファンにとってはそれより怒りが勝ってしまい、後味が非常に悪い別れとなった。
そうは言っても戦力的に見ればドンナルンマの退団は大打撃である。ただでさえ財政面に大問題を抱えていたミランが新しいGKの補強にかけられる金額なんて限られている。そこでドンナルンマの後釜として指名され、フランスからやって来たのがメニャンだった。
ドンナルンマは忘れた
当時のメニャンの知名度はイタリア国内で言えば決して高くなかった。
ただリーグ1で最優秀GKに輝いた(18-19シーズン)良いGKらしい、PKに強いらしい、足下がうまいらしい、フランス代表であり、各年代のユース代表にも選ばれ続けてきたエリートらしい、何よりリールでリーグ1を制した(20-21シーズン)実力者らしい、といった話題が先行していた。ミラニスティは何となく期待した……いや期待するしかない状況だった。そして早い段階でメニャンが素晴らしいGKであることを、ミラニスティはもとよりイタリアが知ることになる。
メニャンが加入するまでのミランは、ドンナルンマのビッグセーブに助けられる試合がそれこそ毎週のようにたくさんあった。これでどれだけの勝ち点を拾ったかわからないし、CL出場権を獲得できたのも紛れもなく彼の貢献があったからだ。だからドンナルンマの流出により、ミランは今まで得られていた勝ち点を失う。それが当初の予想だった。……
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nato
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