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『ORANGEの志』『24の原則』――シュタルフ長野の“真髄”共通言語を番記者が読み解く

2023.04.14

J3第6節で連勝をつかみ、3勝2分1敗で4位に浮上した長野パルセイロ。チームを率いて2年目のシュタルフ悠紀監督は試合中もコーチングエリアいっぱいに出て指示を送り、選手とともに戦い続ける闘将として知られているが、聞き慣れない言葉が飛び交うことも少なくない。その独特な共通言語を番記者の田中紘夢氏に読み解いてもらった。

 「『ORANGEの志』と呼んでいる気持ちの持ち様、選手にピッチで表現してもらいたいことがある。私は『長野をオレンジに』とずっと言っている。まずは我われがオレンジを好きになって、オレンジを表現して、街を明るくして人々に楽しんでもらえるようになりたい」

 AC長野パルセイロのシュタルフ悠紀監督は、就任初年(2022年)の始動日にそう話していた。

 ORANGEの志とは、アルファベットの頭文字をとって『One Team』、『Run Fast』、『Aggressive Duels』、『Never Give Up』、『Grow Everyday』、『Enjoy Football』とチームの志を定めたものである。まずはその一つひとつを、印象的なエピソードとともに紐解いていきたい。

『ORANGE』の一文字一文字が示す志

 One Team。選手・スタッフが一体となって戦うことはもちろんだが、これにはあらゆるステイクホルダーが含まれている。今季ホーム初勝利を挙げたYS横浜戦(○1-0)。1点リードの終盤、指揮官はゴール裏のサポーターに応援を煽り、会場のボルテージが最高潮に達した。こういった周囲を鼓舞する姿勢は至るところで見られ、試合前にはボールパーソンやカメラマンとグータッチを交わす。筆者も就任初年のキャンプ取材時、「One Teamとなって一緒に戦いましょう」と言われたことを覚えている。つまり、クラブに関わるすべての者が一体となってのOne Teamだ。

J3第5節、Y.S.C.C.横浜戦のハイライト動画

 Run Fast。文字通り、速く走るということだ。シュタルフ監督はいわゆる“素走り”のような練習は行わず、ボールトレーニングの中で強度を高めている。残念ながらJ3はトラッキングデータが明かされていないが、その運動量はリーグ屈指。とりわけ今季はスプリント数が向上しており、正式なデータではないものの、J1のトップレベルと同等かそれ以上の数値を叩き出しているようだ。また普段の練習メニューの合間にも、吉澤英生ヘッドコーチから「Run Fastで!」と素早い移動を促す声が聞かれ、山本大貴を中心に呼応する姿が見られる。……

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AC長野パルセイロシュタルフ悠紀戦術文化

Profile

田中 紘夢

東京都小平市出身。高校時代は開志学園JSC高(新潟)でプレー。大学時代はフリースタイルフットボールに明け暮れたほか、インターンとしてスポーツメディアの運営にも参画。卒業後はフリーのライターとして活動し、2021年からAC長野パルセイロの番記者を担当。長野県のアマチュアサッカーも広く追っている。

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