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堅守ニューカッスルの“地上最強”CB。アヤックス育ち、リール経由のスフェン・ボトマンとは何者か?

2023.04.09

プレミアリーグ29試合でリーグ最小の21失点、リーグ最多のクリーンシート13試合と堅守を武器に3位を維持するニューカッスル。11季ぶりの欧州カップ戦出場権獲得が近づくチームで、昨夏加入ながら早くもDFラインの中心を担っているスフェン・ボトマンとは何者なのか。“地上最強”とも謳われるCBのキャリアをYouTubeでは「NUFC JAPAN TV」で愛するニューカッスルにまつわる情報を発信しているWassy氏に紹介してもらった。

放出候補から急成長、「30歳のような」貫禄あるCBへ

 ボトマンは2000年1月12日に、アムステルダム近郊のバドヒューフェドルプで生まれたオランダ人。父の影響で一家全員がフィールドホッケーをプレーしており、スフェンにもスティックを与えられたが、鋭く飛んでくるボールを怖がっていたという。兄の試合を見に連れてこられても、休憩時間になるとホッケーのゴールに向かってサッカーボールを蹴り入れていたそうだ。

 「ホッケーの小さいボールを怖がっていたんだ。とても硬くて、誰かのスマッシュが当たると痛いんだよ!連れて行ってもらっても、これじゃないって感じたのさ。別のコートに行ってサッカーボールを抱えていたよ」(ボトマン)

 そして4歳から地元のクラブでフットボールを始めると、身体能力が高かったことから中盤と左ウイングを中心にほとんどすべてのポジションでプレー。当時はテニスとサッカーの二足の草鞋を履いていた上、レーシングカートに勤しむこともあったようだ。

 テニスの代表チームからも声がかかるほどの才能を持っていたボトマンだったが、9歳のアヤックスアカデミー入団を機にフットボールへ専念。2010年のW杯南アフリカ大会の決勝でオランダがスペインに敗れた時はブブゼラを片手に泣き崩れたというが、意外にも当時のアイドルは、レアル・マドリーで一世を風靡していた対戦国の代表DFセルヒオ・ラモス。この頃からプレミアリーグでのプレーを目標に掲げ、英語の勉強もスタートさせた。

 U-15オランダ代表ではキャプテンを務めたように各年代別代表にも選出されるなど順調に成長を見せていたボトマンだが、クラブ内での評価は高くなく放出候補に挙げられたこともある。アカデミースタッフの間で別のCBと天秤にかけられる中、なんとかチームに残留できた当時を、アヤックスU-17のコーチを務めているゲリー・ビンク氏は次のように振り返る。

 「スフェンはパワフルでパスもうまかったが、短距離のスピードが足りなかった。ファーストチームに残ることはないだろうとほとんどの人が思っていたよ」

 「彼に言ったんだ。『成長できると信じてお前を選んだ。それを証明してくれ』ってね。スフェンはそこからの2年がキャリアを左右したって、今になって感謝していたよ」

 ビンクとともにコーチを務めた元チェルシーDFウィンストン・ボハルテ氏との出会いも、ボトマンのサッカー人生を変えた。常に冷静さを失わないメンタリティ、デュエルの重要性、走り方の改善など、弱点を克服しながら現在のプレースタイルに通じる多くのスキルを身につけたという。

 指導者にも恵まれたボトマンは2018年、アヤックスのリザーブチームでレギュラーを獲得。翌年からファーストチームの練習へ参加すると、19-20シーズンはエールディビジの中堅クラブであるヘーレンフェーンへ1年間、武者修行に送り込まれた。

 キャリア初のトップチームデビューを記録したのは、遠征先でのプレシーズンマッチ。相手は奇しくもニューカッスルと同じノースイースト地区に本拠地を置くサンダーランドだった。味方の負傷により急遽途中出場したが、激しいコンタクトを厭わないイングランド人選手相手にも怯むことなく、高いフィジカル能力とパス能力を見せつけていたという。

 この試合を機にレギュラーを獲得したボトマンはプロ1年目で公式戦30試合に出場。コロナ禍によるシーズン中断まで定位置を守り続けたパフォーマンスに、当時の指揮官ジョニー・ヤンセンも「すでに30歳のようなプレーをしていた」と賞賛を送る。サポーターからも人気を博し、タックルを成功させるとスタンドは得点が決まったかのように沸いていた。

リールでの36歳ベテランとの出会い

 その活躍ぶりからシーズン終了後にはレンタル元への復帰が期待されたが、本人はアヤックスでのプレーが自分にとって正しい選択なのか、悩み始めていた。……

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スフェン・ボトマン

Profile

Wassy

1994年生まれ、埼玉県出身。ハテム・ベン・アルファのドリブルに衝撃を受けニューカッスルサポーターに。現在はNewcastle United Japanの中の人として、Twitterを中心に情報発信している。YouTubeチャンネル「NUFC JAPAN TV」には深堀り解説動画も投稿中。

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