ビハインドを背負ったドルトムントの工夫とは? トゥヘル就任でバイエルンに変化はあったのか? ドイツ首位決戦を分析する【バイエルン 4-2 ドルトムント】
前節首位の座を明け渡し、ユリアン・ナーゲルスマン監督解任に踏み切ったバイエルンと、悲願のリーグ制覇に向け意気上がるドルトムント。文字通りの頂上決戦として、さらにはトーマス・トゥヘル新監督の初試合という意味でも例年以上に注目を集めた両雄の激突は、10連覇中の絶対王者が4-2で勝利し首位を奪還する結果となった。この一戦の戦術的なポイント、そしてトゥヘルの下で変化が見られたのかについて掘り下げる。
今季リーグ戦2度目のデア・クラシカー。「守高攻低」であった前回対戦は2-2のドローで終わっていた両雄の激突は、は4-2と大量得点を挙げたバイエルンが完勝し首位を奪還した。
今回のデア・クラシカーは、バイエルンにとって特別な一戦であった。ユリアン・ナーゲルスマンが突然解任され、新監督トゥヘルの初陣となったからだ。
試合前の段階で首位に立てていなかったとはいえ、首位ドルトムントとの勝ち点差はたったの1。CLではパリ・サンジェルマンを下しベスト8へと進出している。いくら絶対王者といえども、成績面で解任が妥当であったかと言えば疑問符が付く。
賛否両論巻き起こる難しい状況で迎えたトゥヘルの初陣はどのようものであったのか?そして、リーグ優勝を狙える位置につけるドルトムントはどのように試合を運んだのか? デア・クラシカーの戦術的ポイントを振り返っていく。
ドルトムントが見せたボール保持の仕組み
前半、ポゼッション率55%とボールを保持してアクションを起こし続けたのはドルトムントであった。GKグレゴール・コーベルの空振りで先制点を許してしまったからだ。
バイエルンのプレッシングは驚異的であるが、ドルトムントは比較的巧みにプレスを外すことに成功していた。その仕組みがどのようなものであったのかをまず紐解きたい。
最初にアクションを起こすのはインサイドハーフ(IH)のジュード・ベリンガムとラファエル・ゲレイロだ。彼らはアンカーを務めるエムレ・ジャンの脇まで下りてボールを引き出すと、そのままCB間まで下がって攻撃を組み立てる。ジャンは[4-2-3-1]で守るバイエルンのトップ下、トーマス・ミュラーのマークを受けていたこともあり、ほとんど消された状態となった。
しかし、ジャンはむやみに動くことをしなかった。彼が動かない分、IHはスムーズに列を下りることが可能に。彼らが下りることでバイエルンのセントラルハーフ(CH)が大きく前進してケアに出るため、空いたハーフスペースにウイングが絞って受けるか、CFセバスティアン・アレが流れてポストプレーをこなすことで攻撃を展開した。
ただし、この空いたエリアを生かすようにパスを回すのは簡単ではない。このタスクをこなしたのが、右SBマリウス・ボルフと左ウイング(WG)のマルコ・ロイスだ。彼らはバイエルンのプレスに動じず、横パスや斜めのパスを前線につけていった。サイドの低い位置で彼らがボールを失わないのは、「サイドでプレスをはめる」が前提となっていたバイエルンのプレスを覆すものとなる。これにより、プレスがかかり切らないバイエルンはやや引いて攻撃を受けることとなった。
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Profile
とんとん
1993年生まれ、長野県在住。愛するクラブはボルシアMG。当時の監督ルシアン・ファブレのサッカーに魅了され戦術の奥深さの虜に。以降は海外の戦術文献を読み漁り知見を広げ、Twitter( @sabaku1132 )でアウトプット。最近開設した戦術分析ブログ~鳥の眼~では、ブンデスリーガや戦術的に強い特徴を持つチームを中心にマッチレビューや組織分析を行う、戦術分析ブロガー。