3月24日、国立競技場で行われるキリンチャレンジカップ2023(19時30分キックオフ)で日本代表と対戦するウルグアイ代表。カタールの地でグループステージ敗退の屈辱を味わった南米の古豪にとっても、重要なW杯後のリスタート初戦だ。次世代を担う実力者が顔をそろえた今回のチームと彼らが置かれている現状を、ウルグアイの著名ジャーナリストによる率直な評価とともに、Chizuru de Garciaさんに伝えてもらった。
初代W杯王者のプライドが国民の潜在意識に宿り続けるウルグアイにとって、“ラ・セレステ”(空色)の愛称で親しまれる代表チームは国の名誉。チームに対する国民の思い入れは非常に強く、関心も高く、関連する案件は「国事マター」に匹敵すると言っても過言ではない。
W杯カタール大会においては1勝1分1敗、得点わずか2という戦績でグループステージ敗退。あまりにも期待外れな結果に母国の人々を大いに失望させてしまった。あれから約4カ月の月日が流れたが、監督の座はいまだ「空席」のままだ。
監督が決まっていないため、当然、チームが目指す方向性も定まっていない。ウルグアイ国内では、そのような状態で国際親善試合(3月24日の日本戦と28日の韓国戦)に挑むことを「不自然」とする見方もある。
そもそもウルグアイの人々にとっては、「代表監督不在」の状況がこれほど長く続くこと自体が不自然に感じられるだろう。彼らは過去17年もの間、このような状況とは無縁だったからだ。
U-20代表監督が暫定指揮、その背景
ウルグアイでは、2006年3月に“マエストロ”ことオスカル・タバレス前監督が総指揮を務める代表チーム強化プロジェクトが始まって以来、チームの基盤を築く指導体制が維持されてきた。南米諸国の組織では一般的に、首脳陣が交代するたびにそれまで続けられてきたものが慣例のように容赦なく打ち切られるが、AUF(ウルグアイサッカー協会)はタバレスのプロジェクトを重んじ、守り続けた。
そして2021年11月、W杯南米予選で10カ国中7位に転落し、タバレスが解任された後も、難航が予想された後任探しにディエゴ・アロンソが名乗りを上げ、新監督に就任。予選の残り4試合で圧倒的な攻撃サッカーを展開させて全勝を果たし、カタール行きの切符をつかみ取った快挙からは、15年間従事した指揮官が去っても即時に後任が現れて目標を成し遂げるという、サッカー大国の真髄のようなものを見せられた気がした。
W杯敗退と同時にアロンソ監督との契約が終了してもAUFは新監督任命に決して慌てることなく、実に慎重な姿勢を示しているが、これには2026年W杯予選の開始時期と、今年2月にAUFで会長選挙が行われたことが関係している。
昨年12月、AUFのイグナシオ・アロンソ会長は、アロンソ監督との契約更新を希望していることを明らかにした。その後、今年1月初旬にAUFの強化委員会とアロンソ監督の間で話し合いの場が設けられたが、2026年W杯予選の開始が6月から9月になったことを受け、次期監督の選考は2月の会長選挙の後まで持ち越しとなった。
会長選挙ではアロンソ会長の再選が決まったが、会長一人の意思で代表監督を選べるわけではなく、選考にはAUFに属する中立派の役員によって構成される理事会メンバーの承認が必要となる。その理事会の新メンバーが早くても3月末まで決まらないため、日本、韓国との親善試合ではU-20代表のマルセロ・ブロリ監督が暫定的にチームを指揮することとなった。
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Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。