2023年3月2日、衝撃の肉体美が本人の手によってヴェールを脱いだ。下平隆宏、51歳。職業はサッカー監督である。なぜ、彼はここまで自らの肉体を“仕上げている”のか。大分トリニータを追い続けるひぐらしひなつさんが、“シモザップ”の秘密に迫る。
その姿はまさに筋骨隆々。パンプアップしてくっきりと陰影を描き出した上裸写真は、世界サッカー界最高峰の肉体と称賛されるクリスティアーノ・ロナウド38歳のシックスパック画像と並べて、下平隆宏監督自らのTwitterアカウントに公開された。アルマーニの広告にボクサーブリーフのみ着用した姿で登場したり全裸で「VOGUE」の表紙を飾ったりしたロナウドと比較してみても、決して見劣りしない見事なものだった。
勝つためにスタジアムを埋めるには“脱ぐ”しかない
テクニカルエリアでの立ち姿からも、スーツ越しになんとなく「いいカラダしてそう」な様子は見て取れていたのだが、いざ白日の下に晒されたそれは、予想をはるかに超えて“マッスリー”だった。
一体なぜ、指揮官はこのタイミングで自らの体を世界に公開したのか。その理由は「人を呼ぶため」。自らが率いる大分トリニータのホームゲームへの、集客プロモーション活動の一環だ。
今季、トリニータはJ1昇格に加え「毎ホームゲーム入場者数1万人超」という目標を掲げている。クラブ側からの発信ではなく、指揮官が自ら口火を切った。トリニータのホームスタジアム「レゾナックドーム大分」は、4万人を収容する大規模な多目的競技場。2002年日韓W杯や2019年ラグビーW杯日本大会の舞台ともなった美しいスタジアムだが、反面、相当数の観客が入らなくてはスカスカに見えてしまうという難しさも抱える。
トリニータが初めてJ1で戦った2003年からの7シーズンはホームゲーム平均入場者数2万人前後を計上していたが、カテゴリー降格やコロナ禍の影響もあり、数値は大きく減少した。2020年シーズンの1試合平均入場者数は5158人。続く2シーズンも6723人、6618人と低空飛行が続いている。サッカー専用スタジアムを拠点とする柏レイソルや横浜FCで指揮を執った下平監督にとっては、初めてホームスタジアムとしてドームのテクニカルエリアに立った昨季、観客がまばらに座るスタンドがいっそう遠く、サポーターとチームの熱が互いに伝わりにくい環境だと感じられたようだった。
選手たちの士気を高めるためにも会場の雰囲気づくりからプロデュースする必要があると、大分での2シーズン目を迎えるにあたり指揮官は考えた。
現在トリニータでプレーする選手たちの中には子供の頃、2万人、3万人を集めていたホームゲームを観客として経験したことのある者も複数名おり、身を持ってその空気感を知っている。国を挙げて「脱コロナ禍」へと舵を切った今季は、もう一度あの風景を取り戻すチャンスなのかもしれない。それができればトリニータのためだけでなく、Jリーグやスポーツ界、ひいては社会全体を活性化することにもつながる。
かくして今季のトリニータは、勝利を目指すのみでなく集客のためにも力を尽くすことになった。クラブスタッフに委ねるのではなく、選手やチームスタッフが率先して展開する。下平監督以下コーチングスタッフも、プレシーズンから引き続きSNSを活用した積極的な情報発信を行い、チームへの関心をそそるよう努めている。
【Oita Trinita:Training】
・Pass
❶4角形(ターン)
❷Skip(1タッチ)
❸前進(Center経由 or Wide経由)
■4人の関係を保ちながら、スムーズに前進できるように。『1タッチ/ターン/選手特長』によって、タイミングが伴う”斜めの関係”へ。個性は全てGood。基準は高い方がGood。基準を高められるように。 pic.twitter.com/z75vbYMJQ0— Ken Iwase|岩瀬 健 (@k_iwase) March 15, 2023
Profile
ひぐらしひなつ
大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg