カタールW杯のスペイン戦では、日本中が歓喜に沸く貴重な逆転弾を挙げた田中碧。今や日本代表における主力の一人だが、所属するドイツ2部デュッセルドルフでは2年目を迎えながらも、川崎フロンターレ時代のように本領を発揮できているとは言い難い。そんな田中の現状を、現地在住の中野吉之伴氏が伝える。
ブンデスリーガ2部のデュッセルドルフでプレーする日本代表MF田中碧は、現在どのような立ち位置にいるのだろうか。
チームは23節終了時で勝ち点38の5位につけており、1部16位との入れ替え戦に臨める3位ハイデンハイムとの勝ち点差は8。昇格の可能性は残されているものの、その道のりは簡単なものではない。
定まらぬ起用法…対応を重視する指揮官の是非
そんな中で田中にかかる期待はとても大きい。今季右ひざを負傷して3試合欠場した時期を除いてリーグ18試合に出場。監督のダニエル・ティヌーウは対戦相手に応じて自分達の布陣やシステムを頻繁に変更する傾向があり、3バックと4バック、ダブルボランチとアンカー、中盤ひし形での2トップや1トップの下に2シャドーなど、様々な組み合わせで試合に挑む。
同じくデュッセルドルフでプレーするアペルカンプ真大は「監督はとても細かいところまで要求する。練習からパスの時にどの足で出すべきか、とかまで丁寧にやっている。試合への準備でも相手をしっかり分析して、ゲームプランを立ててくれる」と話してくれたことがあったが、その対応がハマることで試合が有利に運ぶこともあれば、対応へ気持ちが行き過ぎてイージーなミスが連続で出てしまうこともある。
カタールW杯での中断から再開後の5試合中4試合で異なるシステムを採用。田中の起用法もタスクも試合ごとに変わってくる。18節マグデブルク戦では[4-4-2]でマルセル・ソボッカとダブルボランチ、19節パダーボルン戦は[4-2-3-1]でヘンドリクスとダブルボランチ、20節ザンドハウゼン戦では再び[4-4-2]でソボッカとのダブルボランチを組んだが、21節グロイター・フュルト戦は中盤3枚横並びとなり、22節ブラウンシュバイク戦では中盤ひし形でのトップ下でプレーした。
ティヌーウ監督としては23節ヤーン・レーゲンスブルク戦で勝利するまで直近アウェイで公式戦4連敗中ということもあり、なんとか試合を有利に進めるためにとゲームプランを練っているのだろうが、試合ごとの変化があまりに大きいと、チームとしての戦い方も熟成されてこない。
前線にはポーランド代表FWダビット・コブナキや2014-15シーズンに2部リーグ得点王に輝いたルーベン・ヘニングスがいるので、そこへ上手くボールを運ぶことができればゴールを決めるだけの力はある。だが、組み立てやチャンスメイクにおいてチームとして安定した再現性を備えていないと、シーズン終盤で連勝していくのは難しいのではないだろうか。……
Profile
中野 吉之伴
1977年生まれ。滞独19年。09年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)後、SCフライブルクU-15チームで研修を受ける。現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13監督を務める。15年より帰国時に全国各地でサッカー講習会を開催し、グラスルーツに寄り添った活動を行っている。 17年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)の配信をスタート。