2023年1月、アーセナルはチェルシーで契約最終年を迎えていたジョルジーニョを1000万ポンドで獲得した。以前から補強の必要性が叫ばれていたアンカーのポジションで定位置を争う司令塔は、ライバルのトーマス・パーティとどんな違いがあるのか。ガナーズを追い続けるマッチレビュアーのせこ氏に解説してもらった。
デビュー戦で躓くも即フィットで信頼確保
ジョルジーニョについて話す前に彼にオファーを出したこの冬のアーセナルの移籍事情について話したい。補強ポジションとして定めたのはケガ人が出て控えの層が薄くなったウイングとアンカーの2つのポジションであった。それぞれのポジションにおけるアーセナルのプライオリティは明確。前者が当時シャフタール・ドネツクにいたミハイロ・ムドリク、後者がブライトンのモイゼス・カイセドである。
しかしながら、第一希望のこの2人は所属クラブとのクラブ間合意に至らずに頓挫することとなる。だが、アーセナルはそれぞれのポジションにバックアッププランを用意していた。それが実際にこの冬に加入した28歳のレアンドロ・トロサールと31歳のジョルジーニョである。
トロサールとジョルジーニョの共通点はすでにプレミアリーグで実績を残している選手であるということ。そして、いずれも若い年齢ではなく、アーセナルのスカッドに照らし合わせればベテランと表現して差し支えないということである。よって、彼らに求められるのはフィットした後の質もさることながら、フィットに至るまでのスピードである。
それを踏まえて、ジョルジーニョのここまでのパフォーマンスを評価したい。加入後のデビュー戦となったプレミアリーグ第22節エバートン戦はチーム全体の出来に引っ張られたといえるだろう。光る部分が見えるシーンもあったが頻度は少なく、終了間際のパスミスで追いつく可能性を潰してしまい、悪い印象で試合を終えてしまった。
だが、トーマス・パーティが負傷し、スタメンで出場するようになると徐々に風向きが変わるようになる。スタメンデビュー戦となったシティ戦では中盤の司令塔として奮闘。相手のマークを集めることで周りの選手に時間を与えていた。かつて獲得を考えていたとされる敵将ペップ・グアルディオラがいかにジョルジーニョを重要な存在として考えていたかがわかるプランだった。
スタメンデビューを経て、ジョルジーニョは徐々に信頼を獲得していく。続くアストンビラ戦は彼がアーセナルファンの確固たる信頼を得る試合となった。試合を通してゲームを組み立てることでリズムを作り、実質決勝点となるミドルシュート(記録上はエミリアーノ・マルティネスのオウンゴール)を放ち、チームに約1カ月ぶりの勝ち点3をもたらした。続くレスター戦でも堅実な仕事を果たし、信頼度を積み上げることに成功したといえるだろう。
前任者2人との違いは「ボールの受け方」
ジョルジーニョ以前にトーマス不在の穴を埋めていたのはアルベルト・サンビ・ロコンガとモハメド・エルネニーの2人だった。だが、この2人ではトーマスの代役を十分にこなすことができなかった。……
Profile
せこ
野球部だった高校時代の2006年、ドイツW杯をきっかけにサッカーにハマる。たまたま目についたアンリがきっかけでそのままアーセナルファンに。その後、川崎フロンターレサポーターの友人の誘いがきっかけで、2012年前後からJリーグも見るように。2018年より趣味でアーセナル、川崎フロンターレを中心にJリーグと欧州サッカーのマッチレビューを書く。サッカーと同じくらい乃木坂46を愛している。