4日にいよいよ開幕する2023シーズンのJ3リーグ。注目は開幕節でガイナーレ鳥取をホームに迎えるSC相模原だろう。元日本代表MF、そして元解説者としてお馴染みの戸田和幸氏を新監督に迎え、J2復帰に向けて再出発するチームの行方を番記者である舞野隼大氏に占ってもらった。
あの戸田和幸がついにJリーグで指揮を執る──。元日本代表選手で清水エスパルスやトッテナムでプレーし、解説者として的確な戦術分析で人気を集めた男はSC相模原で一体どんな思想を持ち、どんなサッカーをしようとしているのだろうか。
望月重良氏がゼロから立ち上げ、神奈川県社会人リーグ3部からスタートしたこのチームは、高原直泰や川口能活、稲本潤一といった日本を代表した往年のスター選手が在籍していたイメージが強いかもしれない。しかし今は、GKの竹重安希彦を除いた全員が26歳以下の選手。そのうち9名は大卒ルーキーという無名の新人ばかりだ。今年2月には株式会社ディー・エヌ・エーによる連結子会社化が決定し、クラブは新たな経営体制で再スタートを切った。クラブの新代表取締役社長・西谷義久氏からそのプロジェクトのリーダーとして熱烈なオファーを受けて迎えられたのが、相模原市出身の戸田監督だった。
「こだわりを持っていろいろなことに取り組んできたので、プロジェクトの見栄えがよいとか、自分が生まれ育った土地だからという理由で決めたわけではありません。きちんと人間関係が構築でき、この人たちと一緒に目指せることに魅力を感じて、自分と一緒にプロジェクトを進めて、夢に向かって仕事をしてくれるコーチングスタッフも参加してくれます。なによりクラブが決断をして、若くてポテンシャルのある選手を集めてくれたことも非常に重要なファクターになりました」
就任会見でそう決断の背景を明かしていた戸田監督は「新しいプロジェクトのど真ん中にいる自覚をしっかり持って、チャレンジを楽しんで、できる限り大胆にプレーする選手とチームを作れるように一生懸命努力していく」と意気込みを語っていた。
「必要なことをすべてやる」。“エナジー”の再定義
サッカーとは、かなり大まかに言えば一つのボールを足で扱い、相手のゴールに多く入れたチームが勝利するスポーツだ。そしてゴール前での攻防に我々は最も熱狂する。そこから逆算して、戸田監督は「いついかなる状況でも相手に立ち向かって、ボールを持ってない局面でも常にボールに向かえるようなチームを作る」と大枠を語る。すべてはゴールという目的へ向かうためにプレーし、ゴールに向かうためにプレスも行う。それにサッカーは対戦相手がいるスポーツだ。
「『僕たちはボールを持ちます』『プレスに行きます』ということではなく、必要なことは全部やります」(戸田監督)と相手を見た上で、グーもチョキもパーも出せるような準備を選手たちは求められている。……
Profile
舞野 隼大
1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。