24試合を終えて18勝3分3敗。19季ぶりのプレミアリーグ優勝へ、1試合消化の多いマンチェスター・シティに2ポイント差をつけて首位を走るアーセナル。その快進撃の要因の一つにホーム、エミレーツ・スタジアムの凄まじい一体感があった。そこには今、アーセナルに人生を全ベットして15年以上の“アーセナル教信者”さる☆グーナーさんも記憶にないほどの熱が、シーズンを通して渦巻いているそうだ。
Super Super Tom,
Super Super Tom,
Super Super Tom,
Super Tomiyasu!
2月15日に行われた今季初の天王山、マンチェスター・シティ戦(●1-3)で冨安チャントがエミレーツ・スタジアムにこだました。そしてこのチャントは、実に今季を象徴するものだった。
この試合、均衡を破ったのは、24分デ・ブルイネのゴールだった。失点のきっかけは、冨安のパスミス。グリーリッシュからのプレッシャーを受けながら、GKラムズデイルに蹴り出したバックパスは大きくコースを外れ、期せずして、ゴール前へと向かうデ・ブルイネへのアシストのような形となってしまう。
守護神ラムズデイルとの1対1。難しいコースではあったものの、そこは百戦錬磨のデ・ブルイネ。ループで蹴り込んだボールは、無情にもラムズデイルの頭上を通過し、アーセナルのゴールへと吸い込まれていった。
ご存知のように、冨安は責任感が人一倍強く、ゆえに、人一倍自らに厳しい選手でもある。シーズンを左右する大事な場面での失態に、一番失望したのは冨安本人だったに違いない。
それをあざ笑うかのように、キンキンに冷えた夜空に響き渡るアウェイスタンドの歓声。だがそんなシティサポの嘲笑をかき消すようにエミレーツにこだましたのが、冒頭の冨安チャントだった。
「顔上げろ冨安!前を向け!!」
そんな思いが、間違いなくこのチャントには込められていた。
しかしこのようなサポーターのリアクションは、今季これが初めてではない。ホーム初戦となった昨年8月のレスター戦(○4-2)でも同様の出来事があった。
エミレーツデビュー戦でオウンゴールを決めてしまい、見るも無残にうつむくCBサリバにも、同様の大歓声が送られていたのだ。試合後マルチネッリが「こんなことは初めてだ」と驚きの声を上げていたが、明らかにサポーターにもマインドチェンジが起き初めている。
「今季のエミレーツはこれまでとは違う」
アルテタやエドゥ(テクニカルディレクター)が口をそろえてそう語るように、これほどまでエミレーツに“要塞感”を感じたことはない。
もちろん旧ホーム、ハイベリーでの無敗優勝(2003-04シーズン)時代は比較対象にしてはいけないだろうし、アルシャビンが決勝ゴールを決めたCLバルセロナ戦(2011年2月)の一体感は異次元だった。しかしその熱量が、収容人数6万人超のエミレーツで継続しているシーズンは正直、僕の記憶にはない。
“Highbury Library”(ハイベリー・ライブラリー)という言葉がある。これは「ハイベリーは図書館のように静かだ」という大人しいアーセナルファンを揶揄(やゆ)するものだが、この図書館化はエミレーツに移転(2006年)後さらに顕著になった。
スタジアムは大人数が集まればいいというものではない。巨大なスタジアムであればあるほど、そこに集まるサポーターの質や本気度が問われる。6万人収容となったエミレーツの熱量は、大きくなった分、だいぶ薄まってしまっていたと言えるのかもしれない。その雰囲気は順位と比例するように重くなり、アーセナルのホームは近年、対戦相手にとって一切脅威とならない、コンクリートのただの箱と化していた。
そんなエミレーツが、なぜ「難攻不落の要塞」へと突如変貌を遂げたのか? 今回はその謎を紐解いてみたいと思う。
アンセムの誕生
エミレーツの復興。そのきっかけの一つが、アーセナルの新たなアンセムの誕生である。
これまでアーセナルには正式なアンセムと呼ばれるものは存在しなかった。正確には、“入場曲のようなもの”はあっても、サポーターが魂レベルで手を取り合いともに場の熱を作り出す、いわゆる“リバプールのユルネバ”的なものは存在しなかった。正確には、「見つからなかった」というのが正しいのかもしれない。
しかし今回、ついに「見つかった」。それが、ルイス・ダンフォード氏の『North London Forever』である。……
Profile
さる☆グーナー
ノースロンドン在住、アーセナルのせいで帰国できなくなった非国民。アーセナル出家信者。ダイエットにも役立つかもしれない8割妄想2割ガセのエアブログほぼ毎日更新中『Arsenal 猿のプレミアライフ』♪底辺ユーチューバーもやってるよ!『Arsenalさるチャンネル』。