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“空中戦”ディーンと“万能型”ファン・バステン。大型FWの2つの系譜

2023.02.21

『戦術リストランテⅦ』発売記念!西部謙司のTACTICAL LIBRARY特別掲載#4

1月27日発売の『戦術リストランテⅦ 「デジタル化」したサッカーの未来』は、ポジショナルプレーが象徴する「サッカーのデジタル化」をテーマにした、西部謙司による『footballista』の人気連載書籍化シリーズ第七弾だ。その発売を記念して、書籍に収録できなかった戦術コラムを特別掲載。「サッカー戦術を物語にする」西部ワールドの一端をぜひ味わってほしい。

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 長身頑健、空中戦に強いパワフルな選手は昔からCFの理想像だった。ディキシー・ディーンは1925~37年に所属していたエバートンで349ゴール、その半分くらいはヘディングだったそうだ。現在、エバートンでディーンの9番を背負うカルバート・ルウィンもヘディングの強さが際立っている。

エバートンの本拠グディソンパークには、その功績を称える銅像が建てられているディーン

 サイドからの クロスボールは、DFがボールウォッチャーになりやすく、至近距離からのダイレクトシュートがGKにとって極めて止めにくいという2つの理由で、今も昔も有効なラストパスであり続けている。これは人体の構造が変わりでもしない限り同じだ。したがって、ゴール前の高さと強さに優位性のあるFWも得点し続けることになる。

 しかし、1930年代あたりまでは圧倒的な優位性があったイングランドのハイクロス攻撃は、やがて徐々に削り取られていった。クロスボールの有効性は変わらないが、CFの優位性が小さくなっていったからだ。対戦相手のGKとCBが大型化し、クロスボール対策にも力を入れた結果である。

イブラとカリューの「オレンジ騒動」

 ただ、それでも空中戦用のCFが絶滅の危機に瀕するような事態にはなっていない。サッカー史の中で極めて重要なポジションだったリベロは現在絶滅している。ウイングも一時期は絶滅危惧種だった。いわゆるトップ下もかなり怪しい。CFも偽9番が流行したことはあるが、それがほぼすべてのチームに適用されるような事態にはならず、昔ながらの本格派CFの居場所は常にあった。

 あまりハイクロスのイメージのない南米でも、ブラジルにはババがいて、70年代にアトレティコ・マドリーで活躍したレイビーニャ、80年代にはカーザグランデやセルジーニョといった大型CFが活躍している。アルゼンチンにはガブリエル・バティストゥータ、エルナン・クレスポ。チリには「ヘリコプター」と呼ばれたイバン・サモラーノがいた。

 ヨーロッパの長身国であるオランダはマルコ・ファン・バステンを輩出。ファン・バステンは現在の長身CFのモデルと言える。……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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