
岩瀬健ヘッドコーチがトレーニング動画をツイッターで公開し、引用RTで下平隆宏監督が解説を加える――そんな今までのJクラブではあり得なかった光景が、プレシーズンのSNS空間では行われていた。大分トリニータが行っている異例のSNS戦略の背景に迫る。
岩瀬コーチがトレーニング動画をツイッターで公開
2023年のプレシーズン、大分トリニータ・岩瀬健ヘッドコーチのツイートがサッカーファンから熱い視線を集めた。ドローンを使って撮影した日々のトレーニングメニューをピックアップし、日々のメモ的に短い説明付きで記したものだ。霧島キャンプ中には毎日ツイートされており、セットプレー練習の映像も気前よく公開されていて、「ここまで明かしていいのか……?」と、Jリーグ屈指の理論派コーチの所業が注目された。
【Oita Trinita:Training】
・Shoot Game
・4vs4 2GK
・GKバックパス:1タッチ
・オフサイドあり
■ゴール前はギリギリのせめぎ合い。とにかく"熱"が欠かせない。ボール1個分で勝ち負けが決まる。プレーしている選手たちの攻防には、この映像以上に"熱"があった。さらにお互いの要求を高めていきたい。 pic.twitter.com/VmbAIAnhC7— Ken Iwase|岩瀬 健 (@k_iwase) January 22, 2023
聞けばそれは下平隆宏監督の目論見だそうで、「あそこまで情報開示する理由はなんですか」と訊ねると「注目されたいから」と指揮官は大らかに笑った。今季、チームは従来のJ1昇格に加え、「毎ホームゲーム来場者数1万人超え」という目標を新たに掲げている。その達成に向けての仕掛けの1つということだった。
岩瀬ヘッドコーチのツイッターアカウントは1万2000人超のフォロワーを持ち、全国の育成指導者の間にもファンが多い。プロのトレーニングメニューを指導のヒントにしようと考える人のための参考材料にもなれば、一般のファンが練習を見学する際の見どころガイドにもなる。コーチングスタッフのミーティングの際に「健さんのツイート、やったらいいじゃないですか」と岡山一成コーチが最初にアイディアを出し、下平監督が公開範囲のボーダーラインを決めた。内容とツイートのタイミングは岩瀬ヘッドコーチに任せている。岩瀬ヘッドコーチがツイート後、下平監督が引用リツイートする形でより噛み砕いて解説し、ライトなサポーターたちにも届きやすいようアシストもする。
GKを入れたポゼッションのトレーニングに、1ゲート加えただけで選手は考えるものが増え新たな思考の刺激が加わる。
指導者の工夫次第でいつものトレーニングが新メニューになる。
雨の中、選手達は意欲的に取り組んでくれました。#trinita#レゾド1万人#岩瀬健 https://t.co/ms3ybV9VAW
— 下平 隆宏 (@shimotaira525) February 7, 2023
……



Profile
ひぐらしひなつ
大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg