『戦術リストランテⅦ』発売記念!西部謙司のTACTICAL LIBRARY特別掲載#3
1月27日発売の『戦術リストランテⅦ 「デジタル化」したサッカーの未来』は、ポジショナルプレーが象徴する「サッカーのデジタル化」をテーマにした、西部謙司による『footballista』の人気連載書籍化シリーズ第七弾だ。その発売を記念して、書籍に収録できなかった戦術コラムを特別掲載。「サッカー戦術を物語にする」西部ワールドの一端をぜひ味わってほしい。
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バルセロナの有名なウイングプレーヤーとしては、1950年代にハンガリーから亡命してきたゾルタン・チボール、あるいは1970年代に活躍したカルレス・レシャックが挙げられるが、バルサらしいウイングというとヨハン・クライフ監督就任後になるだろう。というのも、偽9番とウイングの関係性を無視できないからだ。
クライフ独特の「ウイング観」
90‒91シーズン、フリスト・ストイチコフが加入した。ちょうどそのタイミングで日本での遠征試合があり、クライフ監督にストイチコフの何に期待しているかと質問したところ、「推進力」という答えだった。CSKAソフィアでゴールデンブーツ(欧州得点王)を獲っての加入、得点力に期待しているのかと思っていたのでやや意外な回答だったのを覚えている。
クライフ監督の構想として偽9番があった。ウイングを高い位置に張らせて相手DFラインをピン止めし、CFを下げて相手DFラインの前に数的優位を作り出す。相手のCBはSBより前にポジションを取ることはないので、誰もいない場所にCB2人がいる分、その手前でバルサの数的優位2人が確定するわけだ。もし、下がる9番をCBの1人がマークした場合、中央のCBが1人になる。そこに左右のウイングが入り込むことで中央を攻略できるというアイディアである。……
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。