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王者横浜F・マリノスに受け継がれるハイレベルな日々、サボることを許さない空気感

2023.02.11

Jクラブのキャンプを見た!#4

2月の開幕に向け、キャンプを張り着々と準備を進めているJクラブ。W杯の影響もあり、例年より長いオフを経て迎えたキャンプでのチームの仕上がり具合はどうなっているのか。現地で取材した番記者・ライターがレポートする。

 気温0℃と表示される日もあった。だが、寒さの厳しい宮崎・シーガイアスクエアでも、横浜F・マリノスは熱を帯びていた。決して特別なことをしているわけではない。高強度、ハイスピード。ピリッとした空気の全体練習、時間が定められた自主練習が終わったかと思えば、和やかな雰囲気で選手たちが談笑する。宮崎の地でも“通常運転”でトレーニングに励んだ。それこそが、王者である由縁。ハイレベルな日々の積み重ねが、大きな成功を生み出す――。2018年に就任したポステコグルー前監督、そして21年夏から後を継いだマスカット監督指揮の下、リーグ屈指の攻撃的サッカーに磨きをかけている。

テーマは「成長」

 シーズンが始動して、新加入選手が目を丸くする光景も恒例となった。ハイラインを敷き、素早いプレスと運動量で縦に速い攻撃を仕掛けていく……。既存選手にとっては復習&アップデート。新戦力がいかに溶け込むかは、シーズンの命運を左右すると言っても過言でない。公開された期間にはヴェルスパ大分とツエーゲン金沢と練習試合を行った。ヴェルスパ大分戦はちぐはぐなシーンも見られたが、互いに要求の声を絶やさず、試行錯誤する様子がうかがえた。2チーム構成で、中3日の金沢戦もほぼメンバーを変えずに挑み、連係面含めて差は歴然としていた。精度の課題はあれど、合計スコアは3-0、5-1。どんな相手でも勝ち切る強さを見せつけた。「成長」が今シーズンのテーマ。マスカット監督は2試合を終えた後、キャンプで取り組んだことについて「ハードにコンディションを上げていくトレーニング」「重点を置いたのはプレスのかけ方とボールの握り方」と端的に語った。指揮官も“普段着”そのもの。練習後は新加入選手を中心に1対1で熱心に話し込んで理解度を深めた。

 長崎から加入したFW植中朝日は「いざ入ると、『こんなにチャンスが来るんだ』って新しい感覚。選手同士ですり合わせていけば、もっと取れる。前線の守備ももともと得意としていたので、マリノスのサッカーの中で強みを生かせる」と声を弾ませた。21歳のCFは2試合連続ゴール。これまでF・マリノスに在籍したFWは多くのチャンスからゴールを奪い、日本代表FW前田大然(セルティック)のように世界へ羽ばたいた。“覚醒”の予感が、植中自身にもあるかもしれない。DF上島拓巳は「(柏時代とは)まったく違う。守備も攻撃も主導権を持ってやっていくので。自分ではラインを上げているつもりでも、あと1歩2歩上げてほしいと言われるので、それ以上を求められているんだと。背後のリスクを考えながら、あんばいを探っている」と上島らしい理想のCB像を追い求める。空中戦や対人でさすがの強さを示し、鋭いパスでも魅せた。攻撃面のタスクをこなしていけば、心強い存在となる。

“ホットライン”開通

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J1リーグ横浜F・マリノス

Profile

小口 瑞乃(スポーツ報知)

中学・高校は陸上部で400mハードル専門。同好会でマネージャーを務めた大学卒業後の20年報知新聞社入社。サッカー担当として横浜F・マリノス、年代別代表、なでしこジャパンなどを取材。親の影響で幼い頃からサッカー観戦が日常にあり、好きなポジションはボランチとCB。リフティング最高回数は9回だが運動量には自信あり。

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