3シーズンに渡って指揮を執り、その個性的なキャラクターで周囲の耳目を集めた秋葉忠宏監督の退任を受け、水戸ホーリーホックはヘッドコーチを務めていた濱崎芳己を次期監督に指名した。西村卓朗GMが「理想の形」と言い切るこの指揮官交代には、どのようなクラブの思惑が隠されているのだろうか。これを解き明かすのは佐藤拓也をおいて、他にはいない。
秋葉体制が3年で終わりを告げた理由
就任1年目でリーグ最多得点を記録するなど、それまで守備的なチームだった水戸ホーリーホックを攻撃的なチームに生まれ変わらせ、さらに若い選手たちを鍛え上げて6人もの選手をJ1チームへと送り出した。
「攻撃」と「育成」。
指揮を執った3シーズンという時間の中で明確なブランディングを施し、秋葉忠宏前監督は昨季限りで退任することとなった。
なぜ今季に向けて、監督交代が行われたのか。20年は9位、21年は10位、22年は13位と若干順位を落としているとはいえ、リーグ下位の資金力であることを踏まえれば、3年間中位を維持したことは決して悪くない結果と言える。監督交代が行われたのは、クラブ側だけの判断ではなかったという。「秋葉さんとの双方の話し合いの中で退任が決まりました」と西村卓朗GMは説明する。
「我々も(年俸の)提示を上げることができませんでしたし、4年目だからといって、強化費を大きく上乗せするわけにはいかず、現状維持という条件でのチーム作りになることを伝えました。もちろん、秋葉さんからの要望もありますし、チームが前に進まないのであれば、本人としても4年目をやるべきかどうか悩んだようです。そういうことについて、丁寧に話し合いを重ねたところ、一度仕切り直そうという話になりました」
秋葉前監督にとっては納得できる結果を出せなかったことへ責任を感じての決断であり、コロナ禍の経営やJリーグからの配分金が減少する中で、強化費を上乗せできないクラブ事情が重なって決まった退任だった。
「継続と練磨」がテーマの新指揮官が描くのはクラブと“同じ絵”
そして、後任に選ばれたのが昨季まで2シーズンに渡り、秋葉前監督の右腕としてチームを支えた濱崎芳己であった。これまでJリーグでの監督経験はなく、その手腕は未知数と言わざるを得ない。とはいえ、今回の監督交代は「ある意味、理想としている形だった」と西村GMは言う。
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