第101回全国高校サッカー選手権で得点王に輝いた神村学園の福田師王。大会前にボルシアMG入団を内定させており、現シュツットガルトのチェイス・アンリに次ぎ2年連続で高卒→即欧州挑戦のキャリアパスをたどる選手が現れている。そこでJリーグが経由されなくなりつつある理由を、高校サッカーとJクラブユースの両現場を取材する川端暁彦氏に探ってもらった。
2023年1月9日、101回目の全国高校サッカー選手権は岡山学芸館高校の初優勝というフィナーレを迎えた。チームの結果にかかわらず、3年生の選手たちは次なるステップへ踏み出すこととなるのだが、その選択肢はもちろん一様ではない。
その中で最も大きな話題となる進路を選んだのは4強で惜しくも敗れた神村学園高校のFW福田師王だろう。今後はドイツの名門ボルシア・メンヘングラッドバッハへ加入することが決まっている。高校生の進路として「欧州」という選択肢が明確に加わっていることを印象づける話だった。
昨年度の高校サッカー選手権でも尚志高校のDFチェイス・アンリが同じくドイツをシュツットガルトを進路として選択。コロナ禍の影響でいったん機運が潰えていた欧州クラブの高校サッカーに対する青田買いが続いているという言い方もできるだろう。
アンリと同い年で言えば、青森山田高校に所属していた松木玖生も欧州クラブへと練習参加を実施し、実際にオファーもあった状況の中でJクラブと天秤にかけ、FC東京入りを決断している。つまり、高校サッカー部に在籍する有力選手は、欧州行きかJリーグ入りかを選べる状況になっているとも言える。
一方Jクラブのユースに目を向けると、バイエルンへの加入が決まったサガン鳥栖U-18のMF福井太智のようなケースは、本人の意思はもちろんありつつ、プロクラブ同士の交渉という要素も入ってくるので少し事情が違ってくる。また鳥栖以外のJクラブは選択肢にならないので、これまた高校サッカー部に所属する選手とは背景が異なるところなので、解れるのはまた別の機会にしておきたい。
チェイスと福田が感じた「Jリーグのリスク」
ご存知のように現在はFIFAが18歳未満の選手たちの国際移籍を禁止しているため、結果的に18歳で卒業を迎える日本の高校の仕組みにピタリとハマっている部分もある。それゆえ、この噛み合わせの良さも選手の流出を加速させる要素と言えるかもしれない。今後もこの流れは止まらないと予想する。……
Profile
川端 暁彦
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。