デュエル11勝(地上戦9勝+空中戦2勝)、タックル成功率100%――歴史的勝利を収めたカタールW杯ドイツ戦での驚異的なスタッツが話題をさらった遠藤航。古豪シュツットガルトの主将として戦うブンデスリーガの舞台でも2季連続でデュエル成功数トップに輝く“デュエル王”として、日本代表の中盤に君臨する彼の球際技術をfootballhack氏に解説してもらった。
遠藤航選手は日本にとって代えの利かない存在だ。彼の攻守にわたっての戦術的予測力、デュエル能力は世界でもトップクラス。また、プレス耐性が高いボランチとしてボール運びにも欠かせない役割を担っている。
フィジカルも強靭で、外国人選手と競り合っても当たり負けしないパワーと短時間で相手に寄せ切るスプリント力を兼ね備える。加えて、アジリティ能力も非常に高く、急停止するステップワークやバランスを崩した中でも足を伸ばしてタックルに行ける柔軟性を持ち合わせている。相手からすると完全に逆を取って切り返したつもりが、その足にボールを引っ掛けられてしまうため、まさに予想の上を行く守備力と言うことができる。
そして何より球際が非常に強い。これにはもともと持っているフィジカル能力も関係しているが、それだけでは世界屈指の選手が集まるブンデスリーガのデュエル王にはなれないだろう。彼の圧倒的な球際の勝率は、特別な技術に裏打ちされている。
今回は遠藤選手がよく使う球際でのテクニックを3つの状況に分けて、図を使いながら解説していく。青が彼で赤が相手選手である。
①ボールが相手に近い時
例えば、相手が少しコントロールを乱して遠藤選手にボールを奪うチャンスが発生したとしよう(図1)。
通常は図2のように相手に近い側の足(この場合は右足)を突き出してボールを遠ざけたいと考える。しかし、それだと相手の方が先にボールに触れた場合、ドリブルで加速されてしまい置き去りにされてしまう(図3)。
こんな時に遠藤選手は図4のように右足を先に相手とボールの間に入れ、相手の左足の動きを制御してからボールに触れることで、確実にマイボールにしてみせる。相手の左足が自分の右足に衝突し、右足がボールの方に押されてボールに触れるという流れで、その時ボールの側面を踏むようにタッチするとボールを自分の方向に引き込むことができ、マイボールにしやすい。右足は一度も地面に置かずにすべてワンステップで行っているため瞬間的でわかりにくいが、慣れると確実に球際の勝率アップに繋げられる技術だ。
②ボールが自分に近い時
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footballhack
社会人サッカーと独自の観戦術を掛け合わせて、グラスルーツレベルの選手や指導者に向けて技術論や戦術論を発信しているブログ「footballhack.jp」の管理人。自著に『サッカー ドリブル 懐理論』『4-4-2 ゾーンディフェンス セオリー編』『4-4-2 ゾーンディフェンス トレーニング編』『8人制サッカーの戦術』がある。すべてKindle版で配信中。