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現在の不調は、将来を見据えた“制約操作”の過渡期ゆえか。リバプールの現状を分析する

2022.10.21

2021-22は国内カップ2冠に加えプレミアリーグではマンチェスター・シティと熾烈な優勝争いを繰り広げ、CLでも決勝進出と全コンペティションで結果を残したリバプールが2022-23は苦しんでいる。結果が出ていない理由は何なのか。東大ア式蹴球部テクニカルスタッフの高口英成氏が分析する。

 第11節を終えて、ここまで3勝4分2敗と調子の上がらないリバプール。その不調の原因はどこにあるのだろうか。

 それを探る前に、まずは昨シーズン以前を振り返ることでサッカーの違いを比較していく。

出し手として振る舞うIH

 リバプールのサッカーで特徴的なのは、インサイドハーフ(IH)に受け手としてのタスクが割り振られていないことである。これにはスカッドの特性と、ユルゲン・クロップの信奉するサッカーのスタイルという2つの要因がある。

 絶対的なCBであるフィルジル・ファン・ダイクは、列を越えるドリブルをほとんどしない。また、SBのトレント・アレクサンダー・アーノルドとアンドリュー・ロバートソンは敵チームのサイドへの圧縮を突き破る一発のサイドチェンジを持っているため、張らせておいた方が合理的である。すると自然と中央からのビルドアップのルートは廃れ、サイドからの前進が主となる。これにより、IHはライン間で待っていてもあまりボールを引き出せない。むしろ、幅を取るSBの代わりに絞ってくるウイング(WG)のモハメド・サラー、サディオ・マネとの兼ね合いでライン間に居場所はなく、また高い位置を取るSBのカバーリングをするのにも好都合とあって、相手守備ブロックの手前に下りて出し手として振る舞うことが多い。

 さらに、クロップが“ハードロック”と称するそのプレッシングスタイルからしても、わずかなスペースを見つけ、ボールを引き出してターンできるIHよりも、運動量とカバーリング能力を兼ね備えたIHが適合する。3シーズンほど前からサラーのポストプレーが増加したのはこのためであり、本来IHが担う、背後からのプレッシャー下でボールを引き受けるプレーを、WGが擬似的にこなしていることに起因している。

前進手段

 こうした戦い方を軸としたリバプールのビルドアップは、至ってシンプルである。ジョエル・マティプ、ファン・ダイク、ロバートソン、アレクサンダー・アーノルドの4人は世界を見ても稀有なほどに出し手としての能力に優れたバック4であり、この4人が基本的にピッチ上のどこへでも正確にボールを落とせるので、相手からプレスをかけられるのに対してはめっぽう強い。サイドへ敵がスライドしてくれば逆サイドへ、人を埋めてくるようであればシンプルに前線へと蹴れば良く、時にはWGを囮にライン間のロベルト・フィルミーノに落とすこともできる。ビルドアップ時に非常に均整の取れた配置をしているので、仮にロングボールを納められずにネガトラへと移行しても、効果的にゲーゲンプレスへと移行できるという算段である。

創造性の注入

 しかしながら、プレミアでの対策が進むにつれてWGの走り込む裏のスペースを消され、撤退守備を前に崩し切れないという問題が発生する。そこで、出し手としても受け手としてもゲームメイクに優れるチアゴ・アルカンタラを獲得。並べられたバスの手前でその車体を大きくサイドへ揺さぶることで、ハーフスペースに位置するサラーとマネをWGのタスクから解放し、ストライカーとして振る舞わせることでプレミアリーグを席巻した。

相手の撤退守備への対抗策となったチアゴ

 ここまでが2シーズンほど前までのリバプールのサッカーであり、国内のみならずヨーロッパのタイトルまでをも手中に収めた。しかしながら受け手が少ないというチーム特性は変わらないまま残されており、ライン間の受け手であるフィルミーノと、アンカーを務めるファビーニョという数少ない受け手を封じられてしまうと、ほぼ中央からの前進は困難になってしまっていた。

 では次に、この前提の下で今シーズンの問題点を洗い出してみる。

歪んだ攻撃配置

……

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ユルゲン・クロップリバプール戦術

Profile

高口 英成

2002年生まれ。東京大学ア式蹴球部テクニカルスタッフ所属

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