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「なりすまし」の発信者情報開示も簡易迅速に。改正プロバイダ責任制限法は被害者を救えるか

2022.10.13

Jクラブが頻繁に声明を発表しているにもかかわらず、SNS上でいまだに止む気配のない「なりすまし」を中心とするチームや選手への誹謗中傷。被害者が頭を悩ませ続ける中で10月1日に施行されたのが、「改正プロバイダ責任制限法」として知られる「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律」だ。この発信者情報開示の簡略化が期待される法改正の展望を、『「なりすまし」対応完全ガイド』を作成してくれた諏訪匠弁護士にお願いした。

 誰もが自由にインターネットを使って発信する時代になったことにより、インターネット掲示板やSNSにおける悪質な書き込み(誹謗中傷や名誉棄損)の被害が多発して社会問題となっています。

 サッカー界においても、サポーターやなりすましアカウントによるクラブや選手に対する誹謗中傷や差別的な投稿が後を絶たず、クラブによる警告や注意喚起が連日行われています。このような被害が増加・深刻化する一方で、被害回復は不十分と言わざるを得ません。

 その原因のひとつとして、加害者の特定が困難であることが挙げられます。加害者を特定するためには、インターネットプロバイダから加害者の氏名・住所などの情報を得る必要がありますが、そのためには発信者情報開示という裁判手続をとらなければならず、被害者に過大な負担が課せられています。

 このような発信者情報開示手続の負担軽減を目的として、2022年10月1日、改正プロバイダ責任制限法(以下、単に「改正法」といいます。)が施行されました。本稿では改正前後の発信者情報開示手続の概略を説明するとともに、今後の展望について解説します。

「発信者情報開示請求手続」とは?

 インターネット掲示板、ブログやSNSで誹謗中傷などの書き込みをされて精神的損害を負った被害者は、加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます(民法709条)(細かな要件の説明はここでは割愛します)。しかし、加害者の名前や住所を知らないと実際に請求することは不可能です。またインターネット上では基本的に匿名で書き込みがされるため、加害者を容易に特定することもできません。そこで、アクセスログなどを保有するプロバイダに対して、加害者の情報を開示するよう求める手続が必要となります。これが発信者情報開示請求手続です。

 改正前は、加害者を特定するために大きく2つの裁判手続を踏む必要がありました。1つ目がコンテンツプロバイダ(掲示板運営事業者やSNS事業者等)に対する発信者情報開示仮処分申立て、2つ目がアクセスプロバイダ(通信事業者)に対する発信者情報開示請求訴訟です。

 具体的には、①コンテンツプロバイダに対して通信記録(IPアドレスやタイムスタンプ)の開示を求め、②その情報をもとにアクセスプロバイダに対して発信者の住所や氏名の開示を求めるという2段構えの手続が必要でした。これらの手続は、弁護士に依頼する必要がある、証拠保全の観点から時間的制約があるなど被害者に重い負担を強いるものであることから、実際は泣き寝入りせざるを得ないケースが多くみられました。

改正で見込まれる時間短縮と対象拡大

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Profile

諏訪 匠

2015年弁護士登録。京都大学法科大学院修了。都内法律事務所を経て現在は法律事務所fork所属。中小企業法務や不動産案件を中心として、スポーツ団体設立業務や家事事件など幅広く取り扱う。30年来の鹿島サポーター。好きな選手は小笠原満男と荒木遼太郎。

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