8月に配信が開始され、大きな話題を呼んだAmazon Prime Video の『オール・オア・ナッシング』シリーズ最新版。アーセナルファンはもちろん、例えば松井玲奈さんも「サッカーに興味を持つなんて、人生でないと思っていたから革命。アルテタに勝手に感謝」と感想を書き込むことになった秀作ドキュメンタリーを、おなじみの“アーセナル教信者”さる☆グーナーさんに裏の裏までレビューしてもらった。今晩開催のノースロンドンダービー(日本時間10月1日・20時30分キックオフ)とともに、お楽しみあれ!
「We Love Arsenal We Do!」
今季のホーム開幕戦となったレスター戦(プレミアリーグ第2節)は、赤いサポーターの熱気で埋め尽くされ、開始前からすでに臨戦態勢、エミレーツ・スタジアムには幾度も愛の歌がこだましていた。
シーズン初戦のクリスタルパレス戦で白星発進、さらにホーム開幕戦というのを差し引いても、正直このスタジアムで、しかも中堅どころ相手にこれほどの熱気はあまり感じたことがない。明らかに昨季とはまるで違う「ホーム・エミレーツ」がそこにはあった。
アーセナルを揶揄する、こんな言葉がある。
「Highbury Library」
直訳すると「ハイベリー図書館」。これは静かなハイベリー、そして大人しいグーナーを皮肉った言葉だが、それをメロディに乗せて相手サポからディスられるほど、アーセナルのホームは基本厳かな雰囲気であり、ハイベリーやエミレーツがまったく脅威となり得ていない表れでもあった。
しかしこの日のサポーターのアティチュードは、まったくの別物だった。開戦前から相手を威嚇する脅威がそこには存在し、これまでの「勝ってくれよ……」という神頼みから一転、「俺たちが勝たせてやる!」という心意気が見て取れた。
そんなサポーターを改心させた一端を担っているのが、シーズン開幕直前に解禁されたアーセナルのドキュメンタリー『All or Nothing』なのだ。
『All or Nothing』とは?
『All or Nothing』とは、Amazon Prime Video の取材班がプロスポーツチームにワンシーズン密着し、文字通り「のるかそるか」表から裏の裏まで、ありとあらゆる恥部をこれでもかというほど全世界に向け公開する、大人気ドキュメンタリーである。
これまでもマンチェスター・シティ、お隣のトッテナムにもアマプラのカメラが入っており、プレミアリーグではアーセナルが3クラブ目。
邦題のサブタイトルが『アーセナルの再起』というように、2季連続8位のアーセナルがCL復帰を目指すシーズンを追った内容となっている。しかし残念ながら昨季のアーセナルは5位でフィニッシュし、CLを逃している。にもかかわらず、ホーム初戦のエミレーツは歓喜に包まれ、スタンドは最高の雰囲気でチームを後押しした。
なぜサポーターは、CLを逃した不甲斐ないアーセナルにここまで感情移入し、これまで以上の熱量で応援しているのか?
その謎の答えがすべて詰まっているのが、この『All or Nothing』なのである。
今回、この世界一素晴らしい“洗脳ビデオ”の正体を、裏の裏まで掘り下げてみたいと思う。
鬼神ミケル・アルテタという漢
『All or Nothing』はアーセナルを追ったドキュメンタリーであり、クラブの再興を描いたものであるが、この物語の主人公はズバリ、元アーセナル・キャプテンであり、現アーセナルの最高指揮官ミケル・アルテタである。アルテタなしにはこのドキュメンタリーは成立しない、と言っても過言ではないほどの圧倒的主役である。
このアルテタがとにかくよく怒る。怒るどころか、床にあるものを蹴ったり叩きつけたり、もはや怒髪天レベル。
気持ちの見えない内容で試合の前半を終えれば「お前ら甘い! 5分やるから態度を変えろ」と激を飛ばし、不甲斐ない負け方をすれば「こんな無様な負け方して、お前ら恥ずかしくないのか! 世が世なら殴られても文句言えない!」とFワード(放送禁止用語)を連発しながら潰れた声でまくし立てる。
まるで「お前ら悔しくないのか! 今からお前たちを殴る!!」と涙ながらに選手をぶん殴り、弱小ラグビー部を高みに導いた古き良きスポ根ドラマの金字塔『スクール☆ウォーズ』がごとく、選手を鼓舞しながら背中でチームを引っ張る姿が描かれている。
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Profile
さる☆グーナー
ノースロンドン在住、アーセナルのせいで帰国できなくなった非国民。アーセナル出家信者。ダイエットにも役立つかもしれない8割妄想2割ガセのエアブログほぼ毎日更新中『Arsenal 猿のプレミアライフ』♪底辺ユーチューバーもやってるよ!『Arsenalさるチャンネル』。