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そのプレーは「渦のごとく」。堂安律がフライブルクで得る確かな信頼

2022.09.18

2022-23シーズン、ブンデスリーガのフライブルクに新天地を求めた堂安律。ビーレフェルトでプレーした2020-21以来2シーズンぶりとなるドイツで、ここまで公式戦4ゴールと結果を残している24歳の現状について、フライブルク在住の中野吉之伴さんが取材を交えて紐解く。

 第5節終了時点で首位に立つなど、昨季に続き今季もブンデスリーガで旋風を巻き起こしているフライブルク。そんなチームの中にあって、この夏加入した堂安律は非常に印象的なプレーで注目を集めている。

 開幕のアウグスブルク戦でいきなりゴールを決めると、ここまでリーグ戦全試合に出場。うち5度がスタメン出場で、残り1試合も後半頭から起用されている。6試合で2得点というのは悪くない数字だ。ゴールという結果を出していることが出場にも繋がっているのは確かにあるだろう。

開幕節アウグスブルク戦でのゴールシーン

シュトライヒのスタイル

 だが、それだけで連続スタメンで起用されたりはしない。フライブルクは昨季6位でシーズンを終えている。今季はELとDFBポカールの3大会に臨むことになるが、クリスティアン・シュトライヒ監督は自分たちのサッカーを曲げるつもりはない。

 彼の言う自分たちのサッカーとは何か。

 第6節ボルシアMG戦後に次のように話していたのが印象的だ。この試合はELのカラバフ(アゼルバイジャン)戦から中2日。インテンシティの高い、拮抗した試合の後だけに、選手の疲れを考慮した戦い方や選手起用も考えがちになる。だが、シュトライヒは真っ向から勇敢に戦うスタイルを選択した。自陣に引きこもるのではなく、敵陣からプレスを仕掛け、ボールを奪い、ゴールへ向かう。

 「ボルシアMGにはGKにゾマーがいる。加えて、こちらのプレスに対しても丁寧にビルドアップができるチームだ。ボランチが間違ったタイミングで前へと動いたら、バイタルエリアへのパスを許すことになってしまう。完璧に守るのは難しい。それでも我われは前からプレスをかけていく戦い方を選択した。そして前半に相手陣内で何度かボールを奪取することもできていた。

 リスクがあるのはわかっている。いろんな戦い方を考えた。でもあの戦い方を選んだ。我われは前へ向かってサッカーがしたいし、試合に勝ちたい。そして魅力的なサッカーがしたいんだ。

 チームとしてゴールへ向けてプレーをしていこうという確信を見せてくれた。リスクを怖がらず、プレーを加速させようとする。それも木曜日にハードな試合をした後に、中2日での試合でだ。印象的なパフォーマンスだった」

 自陣にこもって守備を固めるのとは違い、前線から相手にスペースがある中でプレスをかけていく際に、1人の選手が異なるタイミングや気持ち半分で守備に関わるとそこから一気にダムが決壊してしまう。

 求められるのは攻守両面におけるハイインテンシティでのプレーの連続性であり、それも正しいプレーの連続性だ。ピッチに立っている間ずっと足を止めずに、頭を止めずに、次のプレーを正しく判断して実践し続けていくことが求められる。

要求に応える修正力

 そして、堂安が現在レギュラーとして起用されている理由はまさにそこだ。本人も自覚と手ごたえを感じている。……

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カタールW杯フライブルク堂安律日本代表

Profile

中野 吉之伴

1977年生まれ。滞独19年。09年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)後、SCフライブルクU-15チームで研修を受ける。現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13監督を務める。15年より帰国時に全国各地でサッカー講習会を開催し、グラスルーツに寄り添った活動を行っている。 17年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)の配信をスタート。

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