CLグループステージ第2節の大一番、グループCのバイエルン対バルセロナは、50分にリュカ・エルナンデス、54分にサネがネットを揺らしたホームチームが2-0で勝利した。敵地ミュンヘンで善戦したものの、これでバイエルン戦は5連敗。スペイン側の反応を交えて現地在住の木村浩嗣さんが一戦を振り返る。
スペイン側の感覚では明らかにおかしい
スペイン側の見方からするとバイエルンはずい分、粗いというか雑なチームだ。ボールを奪うと直ちに前線の4人、サネ、ミュラー、ムシアラ、マネへ縦パスを送り込む。通れば絶対的なチャンスになる、というのが、それ以外の選択肢のなさの言い訳のようだった。
そりゃそうだ。4人とバルセロナの後方の4人、マルコス・アロンソ、クリステンセン、アラウホ、クンデは1対1になっており、抜けばGKテア・シュテーゲンとの1対1ができ上がる。だが、ほとんどのパスが通らない。DFからすれば正面から来るボールほどカット、奪いやすいものはなく、FWからすれば背後から来るボールほど自分のものにしにくいものはない。よって、せっかくマイボールにしたのにすぐに失う。たまに足下に収めても前を向かせてもらえない。
面白いのは収めた時の対応だ。スペインの常識ならオーバーラップを待つ。SBに攻撃参加させ、2対1での突破を狙う。が、バイエルンは違う。あくまで単独で仕掛ける。まるでSBが上がって来る時間がもったいないかのように。で、やっぱりボールを失う。
観衆のどよめきも面白かった。ボールを失っても“惜しい!”という感じで反応するのだ。「バイエルンは違う」と書いたが、「ドイツは違う」という言い方の方が正確かもしれない。応援の仕方もボール奪取、FWのランで“ウォー”と盛り上がり、縦パスをロストして“フーっ”とため息をつく。この繰り返し……。
ゲーゲンってこれのこと? イケイケのこと?
スペイン側の感覚では明らかにおかしい。SBのサポートを待たず単独で無謀に仕掛けてボールを失ったら、“何やってんだ!”となる。手を広げて周りのお客と一緒に呆れる。サッカーを知らない、エゴイストの烙印を押されても文句を言えない。
「私は怒っていると同時に、誇りにも思っている」
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。