サッカー愛を持って”半歩先”の情報を。野々村芳和が語るスカパー!
この記事は『スカパー!』の提供でお届けします。
「ドイツ ブンデスリーガ」「JリーグYBCルヴァンカップ」「天皇杯 JFA 全日本サッカー選手権」をはじめとするサッカー中継の他、先月には『ブンデスリーガジャパンツアー2022 powered by スカパーJSAT』の開催を発表し、日本サッカー界で確かな存在感を示し続けるスカパー!
そんな同社のサッカー番組に長年出演を続けるのが今年Jリーグチェアマンに就任した野々村芳和氏である。「Jリーグアフターゲームショー」「Jリーグラボ」など、番組MCとして番組制作に携わり続けてきた中で考える功績や課題、そして今後のスカパー!への期待について話を聞いた。
悪い部分も理解してもらった上で
――今回のインタビューテーマは『スカパー!』です。野々村さんは同社で放送されていたハイライト番組『Jリーグアフターゲームショー』をはじめ、多くのサッカー番組や試合中継にMCや解説として出演されてきました。
「番組(Jリーグアフターゲームショー)が始まったのが2007年。当時のスカパー!はサッカーに関するコンテンツをたくさん放送していて『楽しそうだな』と思っていたので、MCのオファーがあった時は嬉しかった。(スカパー!のサッカー番組は)基本的にはサッカーを好きな人がお金を払って観ているものだから、地上波と違って深い話をしようと思っていた記憶がありますね」
――地上波との差別化という点では、野々村さんの“忖度なき発言”は熱心なサッカーファンに支持されました。あのスタンスの背景には、メディアに対する問題意識があったのでしょうか?
「それはあった。Jリーグの素晴らしい部分って、たくさんあるじゃないですか。でも、それは悪い部分も理解してもらった上じゃないと何が素晴らしいのか伝わらない。何事も『すごい!すごい!』と伝える地上波への違和感はあったので、サッカー好きが観るスカパー!で同じことをすると、嘘だと見抜かれるだろうなと」
――批評の対象は当時としては珍しく審判にも及びました。発展的に『レフリー座談会』という形で番組化され、判定に関して審判も交えた形で議論が重ねられました。
「最近、当時の発言について聞かれた時は先に謝ることにしていて……諸々すみませんでした(笑)。審判だけじゃなくて、まだ現役を続けている選手からも当時のことを時々言われるんですよ。自分としてはサッカーへの愛情がある中で、少し違った視点で伝えようくらいの気持ちだったのだけど」
――現在、Jリーグのチェアマンという立場になって、当時のスタンスに後悔はありますか?
「いや、それは全然ない。批判した部分を切り取られることが多いけど、日本サッカーを良くするために行っていたことだし、いろんなサッカーの見方があることを伝えるのは必要だから」
半歩先の情報
――以前、北海道コンサドーレ札幌の伊藤浩士さん(パートナー事業部)を取材した際、野々村さんが同クラブの社長として『仲間を増やしていこう』というメッセージを発信し続ける意義ついて言及されていました。現在はJリーグチェアマンという立場ですが、出演されるメディアによって発信する情報は変えていますか?
「メディアによって視聴者層が全然違うので、その意識はある。スカパー!で10年以上番組に出演して感じるけど、視聴者のリテラシーは絶対に上がっている。一方で、地上波放送でしかサッカーを観ていない人とのギャップは広がってきている。だから、伊藤の言う通り、北海道のラジオで話す時はコンサドーレに興味を持ってもらえるようなことを話すし、スカパー!では専門的なことを話すようにはしていた」
――スカパー!のサッカー番組内では、「J1昇格のために営業収益は●億円が必要」など、昔からビジネス面に関する言及も多い印象があります。
「そうした基準を示さないと、サポーターも応援するスタンスが難しいんじゃないかと思って。欧州では当たり前の見方だけど、当時の日本ではあまり語られない部分だったので」
――そうした話を聞くと、コンサドーレの社長就任は必然だったように感じます。
「いや、社長就任は迷ったよ(笑)。(田中)晃さん(元・スカパーJSAT執行役員専務/現・WOWOW社長)に相談したら『それはやるべきだろ』と言われて。晃さんが『スカパー!関係者からJリーグクラブの社長やJリーグチェアマンを輩出する』と話していたことはよく覚えている。あれから10年か……スカパー!の仕事を通じて、いろんな経験をさせてもらったことは感謝しています」
――水戸ホーリーホック社長の小島耕さんも番組制作会社(Production9)社員としての立場でスカパー!のサッカー番組に携わられていました。スカパー!での経験はJクラブの社長やチェアマンとしての仕事において、どのように活きるのでしょうか?
「即興力が鍛えられた部分はあるかもしれない。限られた時間で、分かりやすく伝える力。それこそ晃さんが『半歩先の情報』という言葉をよく使っていましたけど、話を聞いてくれた人に何か1つでも新しい気付きを与えられたどうかは昔も今も考えますね」
そこに愛情があるかどうか
――Jリーグチェアマンに就任されてからも出演を続けている番組が「Jリーグラボ」です。
「よくこんなに長くやっているよね(笑)。当初はオフシーズン限定番組で4回限定の放送と聞いていたのに、気が付いたら放送回数は100回を超えていて。けど、サッカー自体の露出が少なくなっている中で、観ていただける方がいるなら続けたいと思っています」
――この番組は他業界の方がゲスト出演することも多いですが、人選には野々村さんの意見も反映されているのですか?
「スタッフに聞かれたら答えるけど、積極的に口を出すことはないですね。収録も毎回即興でやっていて。ゲストの方のキャラクターに合わせる形で会話するというか……ノープランというと怒られるけど(笑)、それくらいの緩い雰囲気もこの番組の魅力なので」
――コロナ禍のクラブ経営について議論することもあれば、Jリーグのマスコットの名前当てクイズが行われることもあり、この番組は話題が多様です。
「大切なのは、そこに愛情があるかどうか。ゴシップとかじゃなくてね。視聴者の楽しみ方も自由でいいと思う。自分の楽しみ方の軸を見つけることは重要。そして、本当にサッカーが好きだと思ったら、仲間の1人としていろんなことにサポートしてもらえればありがたいですね」
――最後の質問です。昨今、サッカーを放送・配信するメディアが多様化する中で、スカパー!に今後期待することは何ですか?
「良い番組を作るためには、サッカーに愛情があるスタッフが必要。そういう意味ではスカパー!には昔からサッカーを愛する社員がたくさんいる。権利の部分は世界的にも混沌としていて、未来のことは誰にも予想できない。ビジネスとして難しい判断を迫られることは、どのメディアにも共通する部分ですが、サッカーが好きという想いは引き続き持ち続けて欲しいと思います」
「Jリーグラボ」
最新回(#111):ゲスト:山下良美、播戸竜二
今回の研究テーマは「ワールドカップ審判員」。ワールドカップ・カタール大会の審判員に選ばれた山下良美さんを深堀り!BSスカパー!で放送中。
Photos: Ryo Kubota
Profile
玉利 剛一
1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。その後、筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。2019年よりフットボリスタ編集部所属。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆を行っている。サポーター目線をコンセプトとしたブログ「ロスタイムは7分です。」も運営。ツイッターID:@7additinaltime