山見大登らと高めあった4年間。本山遥が岡山で主力の座を掴むまで
J2リーグが近年稀にみる混戦を極めている中、第28節終了時点で5位につけるファジアーノ岡山の主軸として大卒ルーキーである田中雄大と本山遥が活躍している。新卒1年目の選手が2人もJ2上位クラブで開幕戦からスタメンの座を掴み、絶対的な主軸として試合に出続けることは珍しい。
4月に公開した田中雄大のインタビュー記事に続き、今回は本山遥へ話を聞いた。
高校・大学と相手を圧倒する上下動を武器にサイドバックで活躍した本山は、木山隆之監督の元でアンカーにコンバートをされ、開幕スタメンを掴み全試合に出場している。これまで筆者が見てきた大卒ルーキーの中でも、プロに入って役割が大きく異なるポジションで主力を掴んだケースは見たことがない。
本山自身も驚いたこのコンバートの裏側から、プロ入りを大きく近づけた大学4年間を余すこと無く振り返ってもらった。
吉田豊やワンビサカがお手本だったが、今は……
――主戦場であるサイドバックからアンカーとなってレギュラーを掴んだのは驚きでした。シーズンも折り返しましたが、ここまでを振り返っていかがでしょうか?
「ポジションが変わったことが一番大きなポイントでした。まさか自分がプロでアンカーとしてプレーすることになるとは思ってなかったので……。本当に試行錯誤というか、悩みながら何とかやり切れた前半戦だと感じています。加入して開幕スタメンを取ることは自分の中で意識していたんですけど、アンカーになったタイミングで、『開幕スタメン取れるのかな』という不安はありましたから」
――あらためて、アンカーをやるまでの経緯を教えていただけますか? 本山選手が主戦場としていたサイドバックとは役割もかかるプレッシャーも異なります。
「サイドバックでプレーすることがほとんどないまま、プレシーズンからアンカーを任されたんです。チームは4-3-3でスタートしたんですけど、アンカーのところに『本山』のマグネットが貼られていて。間違いかと思ったんですけど、本当にそのままそのポジションをやり続けることになって。(監督から)特に何か言われたわけではないんですが。
転機は宮崎でのキャンプです。練習試合が4回くらいあったのですが、最初はベンチ組でした。練習でも全然良いプレーができなかったので『これは駄目かな』と思っていたのですが、3試合目のスタメン組に名前があって驚きました。ある程度そこで自分の特長を出せて、開幕スタメンが現実的になってきたのかなと。
周りからは『自信持ってやれば良い』『やりたいようにやれば良い』と言ってもらって、前向きに捉えてプレーをしました。そこから自分の特長を生かしながらやっていけるようになりました。ただ、最初は戸惑いしかなかったですね」
――アンカーの位置で生かした自分の特長は?
「ボールを奪うのが自分の特長だと思っていて、そこを出さなければいけないとは思っていました。4-3-3のアンカー周りのスペースは大きくなるので、その部分をカバーできる部分は評価されたのかなと。そういった意味では自分の特長がすごく生きる場所ですね」
――監督からの指示は?
「『自信を持ってボールを受けろ』くらいですね。特に細かな指示はなかったです」
――実際に開幕戦にアンカーで出場してみて、いかがでしたか?“普通”にやれているように見えました。
「もっと緊張するかなと思っていたんですけど、あまり緊張せず、のびのびとやれました。最初のプレーで自分が前向いて相手を1個外せて『これはいけるかも』と思って。そこからはだいぶ落ち着いてプレーできたと思います」
――そこからアンカーの定位置を掴みました、その中で生まれた課題もあるのかなと。
「中盤の選手がどういうプレーをするかでチームのスタイルが決まると思いますし、だからこそ自分がもっと前にボールを配給できるプレーヤーになって、ゲームをコントロールする部分を求めないといけないと思いました。出場することを強く意識して1年目を迎えようと思っていた中、思っていた以上の成果を出せているし、その中で本当にいい経験を積めているとも感じています」
――大学時代はサイドバックとして吉田豊選手やワンビサカ選手をお手本にしていたと言っていましたが、今は誰を見ていますか?
「今は遠藤航選手を見ています。あとはヴィッセルの山口蛍選手や橋本拳人選手、名古屋の稲垣祥選手。動けてボールを刈れるタイプの選手ですね」
――同期の田中雄大選手と共に大卒選手2人が試合に出ているのはすごいことかなと。
「普段から仲良くしていますし、互いに大学のチームでキャプテンをしていたので、切磋琢磨し合いながら『もっとやらなきゃだめだよな』とよく話しています。僕も雄大が点をとったり、活躍したりするのを見るとすごく刺激を受けますし、すごく良い関係性を作れているのかなと思います」
衝撃を受けた関東との差
――大学時代の話を聞きたいのですが、2年生のインカレ(全日本大学サッカー選手権大会)で明治と戦って衝撃を受けたという話を以前におっしゃっていました。……
Profile
竹中 玲央奈
“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。愛するクラブはヴェルダー・ブレーメン。