EAFF E-1選手権の第2戦、中国代表との試合でスコアレスドローに終わった日本代表。快勝した香港代表戦からメンバー全員を入れ替えて臨んだ一戦へのアプローチから、この大会に対する森保一監督のスタンスが明らかになったというらいかーると氏が指揮官の狙いとその結果ピッチ上で起こったことを詳らかにする。
チーム森保のストーリーを観察してきたものからすると、中国戦は非常に興味深い試合となった。香港戦を振り返ってみると、横浜F・マリノスのメンバーを中心に、横浜F・マリノスと同じ配置で臨んだ試合であった。試合内容は急造チームの難しさに引っ張られながらも、横浜F・マリノスっぽいプレーも散見されたことが特徴だろう。
しかし、中国戦を踏まえてあらためて眺めてみると、“横浜F・マリノスっぽさ”は時間がないがゆえの妥協の産物のようなもので、彼らの個性を発揮するための[4-2-3-1]というよりは、これまでの日本代表のストーリーに忠実な[4-2-3-1]を香港戦でも採用した可能性が急激に高まった印象である。つまり、横浜F・マリノスの[4-2-3-1]に合わせてプレーをしやすいように香港戦で配置を調整したというよりは、たまたま日本代表が採用してきた[4-2-3-1]と横浜F・マリノスの配置が偶然の一致をしただけなのではないだろうか。
サンフレッチェ広島の選手たちの個性を発揮させることを考えれば、サンフレッチェ広島の選手たちが今季で行っている3バックを中心とした配置で試合に臨むべきだろう。大会の結果を考えても、限りなくベターに近い策だ。しかし、森保一監督からすれば、その決断はこれまでに積み上げてきたストーリーからの逸脱を意味するものとなる。もちろん、今大会が歩んできたストーリーから離れたスピンオフだとしても、異議を唱える人は少ないだろう。だが、森保監督はスピンオフを許さずにストーリーの継続を示した。それがサンフレッチェ広島のメンバーに[4-2-3-1]を行わせたことへの疑問に対する答えだったのではないだろうか。
“阿吽の呼吸”に難儀
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Profile
らいかーると
昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。