7月11日に発売され、現在プレゼントキャンペーンも実施中の『footballista 2022 QATAR WORLD CUP GUIDEBOOK』。出場32カ国確定のタイミングでどこよりも早く、全チームの有力メンバーを網羅した選手名鑑と戦術分析をお届けするカタールW杯観戦ガイドだ。その連動企画として、WEBでは各国の担当ライターがそれぞれ、本大会でブレイク期待の“ライジングスター”を紹介。第3回は黄金世代の活躍でロシアW杯3位に輝いた「ベルギー代表」から、次世代のエース候補、21歳のFWデ・ケテラーレ(クラブ・ブルッヘ)を取り上げる。
クラブ・ブルッヘのアカデミーでサッカーをしつつ、アントワープのテニススクールに通って10歳の時にベルギー・フラマン地域(オランダ語圏)のテニスチャンピオンに輝いたスポーツ万能の少年がいた。それが現在、ベルギーで最も期待を寄せられているアタッカー、シャルル・デ・ケテラーレ(21歳)だ。
「個人スポーツはメンタルがキツイ。友だちと一緒にサッカーをする方が楽しい」ということで、デ・ケテラーレがサッカー一本に絞ったのは11歳の頃。その選択はきっと正しかったのだろう。2019年にクラブ・ブルッヘのトップチーム昇格を果たしたレフティは1年1年確実に成長し続け、並行してチームのベルギーリーグ3連覇への貢献度を高めていった。
「18試合で6ポジション」をこなした2年前
デ・ケテラーレに対する私の第一印象は「なんと優雅なプレーをする選手だろう」というものだった。192cmのスリムな体を軽やかに翻しながらフェイントで相手をかわしてドリブルし、敵陣前で落ち着き払って最適のプレーを選択する様は、とても18歳(2019年当時)とは思えぬものだった。ライン間でポジションを取り、ボールが来る前に周囲をスキャンし、トラップする瞬間に敵の反対を取ってターンする姿に賢さも感じた。同時に、泥臭く守備をする姿も好印象だった。デビュー1年目の19-20シーズン、ベルギーリーグ出場13試合で1ゴール1アシストを記録し、CL・ELで合わせて6試合プレーした若者に、多くの人たちが未来を夢見た。
2年目の20-21シーズン、デ・ケテラーレはリーグ戦で32試合にプレーし、一気にチームの中心選手の一人になった。当時、人々を驚かせたのが、彼のポリバレント性だった。2020年11月24日のCLドルトムント戦では、タクティカル・フォーメーション表によるとデ・ケテラーレのポジションは[3-5-2]の左ウイングバックだったが、実際にキックオフのホイッスルが鳴ると彼は左SBとしてプレーしていた。この試合直後の『ヘット・ラーツテ・ニーウス』紙は「デ・ケテラーレは18試合に先発し6つの異なるポジションでプレーしている」と記した。その内訳は次のとおりとなる。
左ウイングバック:1試合、左SB:1試合、右ウイング:1試合、セントラルMF:1試合、攻撃的MF:2試合、セカンドストライカー:12試合。
この「セカンドストライカー」をあらためて見直すと「3トップの中央」と「2トップの一角」の両パターンがあった。また、実際には「左ウイング」として先発した試合もあったはずだ。
クラブ・ブルッヘはドルトムントに3点を奪われ完敗したものの、『ヘット・ラーツテ・ニーウス』紙はデ・ケテラーレに採点7(10点満点)を付け「守備に奮闘し、機を見て攻撃に絡んだ」とパフォーマンスを称えている。同時に、同紙は19歳のタレントのインテリジェンスを褒めつつも「トッププレーヤーに上り詰めるためにはポジションをもっと絞る必要がある」とページを大きく割いて警鐘も鳴らしている。
数カ月のCB転向、3カ月のプレス戦術特訓
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Profile
中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。