パラグアイ戦で長短の正確なフィードからビルドアップに大きな貢献を果たしたシュミット・ダニエル、ブラジル戦で数多くのシュートストップを見せて接戦を演出した権田修一。果たして日本代表は、カタールW杯で誰をGKに起用すべきなのか。西部謙司氏にその疑問をぶつけてみた。
W杯で対戦するドイツ代表、ニュージーランド代表またはコスタリカ代表、スペイン代表との試合を考えると、日本代表のメンバーが3戦とも同じとは限らず、むしろ変わるだろうと予想される。それにはGKも含まれる。
本大会でGKは固定しないかもしれない
ポイントになるのは、自陣からのビルドアップをどの程度行うか。同時に敵陣のプレッシングをどうするか。GKに関係するのはビルドアップの方になる。
対強豪国ということでは、ブラジル代表戦の戦い方がベースになりそうだ。敵陣ではハイプレス、自陣のビルドアップも可能な限り行う。これは志の高い選択と言える。
ヨーロッパの中堅国を見ると、対強豪国の戦い方は様々だ。ブラジル戦での日本のようにハイプレスとビルドアップの両方を放棄しないチームもあれば、ハイプレスはせず自陣に引いて守備ブロックを築くチームもある。ハイプレス志向だがビルドアップはしない、ビルドアップはするがハイプレスはしないなど、対戦相手との力関係や自分たちにどんな特徴の選手がいるかで自ずと選択は変わってくる。また、ブラジル戦がそうだったように、ハイプレスしても奪えずに結局は「バスを置く」形にならざるを得ないケースもあるし、時間帯によっても戦い方は変化していくものだ。
とはいえ、ハイプレスとビルドアップの両方を諦めなかったブラジル戦の戦い方は、強豪国を相手にした場合の最も志の高い選択になる。ただ、ブラジル戦はあくまで親善試合に過ぎず、ブラジルとドイツとスペインはそれぞれ違う。ブラジル戦は志高く挑んだテストケースであり、本大会では微妙に戦い方が変わってくるのではないかと思われる。
対ドイツは「繋げない」ので権田が有力
ブラジル戦の前に行われたパラグライ代表との試合ではシュミット・ダニエルが起用された。ブラジル戦は権田修一、ガーナ戦は川島永嗣だった。現時点でのファーストチョイスは最も重きを置いていただろうブラジル戦で起用された権田と考えられる。……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。