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「新しいことを始めないと変わってはいかない」――小池龍太が“挑戦”を続ける理由

2022.06.08

横浜F・マリノスのエンジン、最強のサイドバックとして今季リーグ戦14試合に出場し、チームを支える小池龍太。高校卒業後、小池のサッカーキャリアは当時JFLに所属したレノファ山口からスタートした。J3、J2とチームとともに昇格を果たし、17 年には柏レイソルへと個人昇格。着実にステップアップし、19 年にはベルギー2部のロケレンに移籍。しかし、クラブはその後破産宣告を受けて倒産。20年夏から横浜F・マリノスに加入した。ファンとも積極的な交流を持つ小池が発信しているウェブサイト「note(ノート)」では、自身のサッカーキャリアと向き合い、現在に至るまでの苦楽や等身大の小池龍太についてありのままをつづっている。今回は、26年にわたる人生経験の中で生まれた小池の「セカンドキャリア」に対する意識に迫った。

支えてくれている人たちと信頼関係を築きながら前に進みたい

――5月25日の京都戦では、素晴らしい今季3ゴール目を挙げられました。試合後には、ご自身で配信しているLINE LIVE「龍とひと休み」でも白星の喜びを分かち合っていたと思います。昨シーズン始められたLINE LIVEの配信はどういったことがきっかけだったのですか。

 「きっかけで言うと、コロナの状況で僕自身はF・マリノスでサポーターの皆さんと練習後にファンサービスで関わる機会とか、イベントで会うことがありませんでした。僕という選手を知っていただきたいですし、F・マリノスの現状を伝えて選手と関わる機会を少しでも持ってもらう意味で始めさせていただきました」

――交流の時間は小池選手にとってどんなものですか。

 「時間が経つにつれて、かなり多くの皆さんがファミリーになって配信を楽しみにしてくださって。自然と毎試合勝って配信するために責任感を持って取り組んでいるのは間違いないですし、F・マリノスを代表してプレーすることはもちろん、僕のファミリーに『ひと休みファミリー』って名前をつけた中で、ファミリーを代表して戦うことも責任を背負って戦える理由になっています。始めて1年は経っていないですけど、絆とかそういうものは強くなっていて、仮に負けた時でも自分が次の試合に気持ちを切り替えて突き進むために、前向きな配信をしていこうと思うし、それを後押ししてくれる存在です。始めて良かったし、継続したいと考えています」

――ファンの方の声がダイレクトに届くことは、選手にとっても大きいですよね。

 「自分が何のために頑張っているのかを考えると、自分のため、家族のためといったことは大きいけど、やはりクラブやクラブを支えてくださるサポーターの皆さんのために頑張る気持ちは常に持たないといけない。それをダイレクトに改めて感じる時間ではあるので、すごく大切な時間です」

――試合前にはスタジアムの外で同じ背番号のユニホームを持った人たちが集合して写真を撮るなど、マリノスサポーターらしい文化も見かけます。サポーターの熱さはどのように感じていますか。

 「他のチームでも見たことがなかった光景ですし、ただF・マリノスらしいなと。一人で応援するのではないと、ファミリーを感じられます。ファミリー全体でクラブを支える、応援するって部分を感じられるのはF・マリノスらしいし、クラブの大きさと質、それに伴う人がいるからこそ成り立っているんだと改めて感じます」

――小池選手はLINE LIVEに続いて、文章や写真などを配信するウェブサイト「note(ノート)」でご自身のキャリアについて発信することも始められました。いつ頃の時期から書くことを考えていたのですか。

 「書きたいなと思ったのは、ノートを始める半年前。ただ書きたいというよりは、何かセカンドキャリアに向けて自分のスキルを伸ばしていける場がほしいと一人で考えていました。その中で、クラブのトップパートナーであるマネーフォワードの金井(恵子)さんと石戸(健)さんとお話をさせていただく機会があって。自分の考えに合っている取組みの選択肢の1つとしてノートを始めてみようと。金井さんや石戸さんの人間性もありますけど、マネーフォワードの方針『人の人生を前に進める』『前に進んでいく』ってところが自分の考えにもつながっているんだと思います。やる気になりましたし、やりたいと思わせてくれました」

――マネーフォワードで社長をされている辻庸介さんの書籍「失敗を語ろう」にも大きな影響を受けたと仰っていました。どのようなところに気持ちを動かされたのでしょうか。

 「それこそ僕が金井さんに相談していた時期に本を読みました。一番感動したシーンは、“小さな家”と表現をしていましたけど、設立当初のメンバーで小さな一つの部屋から上場までいく過程で、苦しい状況にありながらメンバー全員でそれを乗り越えていくシーン。僕もやはり、一人で何かを成し遂げるよりは周りにいるメンバーや支えてくれている人たちと信頼関係を築きながら前に進みたいと思っている人間なので、その歩み方に感銘を受けました。会ってみてお話してみて、辻社長の人柄に惹かれる部分もありますし、辻社長だからこそできたこともあると思います。僕自身もそういう人間になっていきたいと思う中で、そばにいる人たちといいアイデアを出したり、何かいい経験ができるのではないかと、一緒にプロジェクト(※後述)をやりたいと気持ちを伝えました」

――パートナー(スポンサー)と濃い関係を築いている選手は正直なところあまり見たことがありません。

 「少ないですし、そうやって進めてくれる方々が周りにいる環境にないという可能性もあります。僕はそれでもやってみてどうなるか、ということをすごく大切にしています。状況的にやりたいことすべてがOKかというとそうではありませんが、新しいことをする、新しいアイデアが浮かぶ、関係性も含めて、常にF・マリノスは新しいことを目指していますし、モデルになろうとしている。選手個人としても同じような取り組みをやっていきたいですし、新しいサイクルが生まれれば、もっとマリノスに興味を持ってくれたり、サッカーに興味を持ってくださるスポンサーや企業の方も増えるのではないかと。少しでも楽しいことをどんどんやっていきたいです」

小池選手も出演しているマネーフォワード社のYouTube動画「教えて!マネフォ先生」

変化のきっかけとなったベルギー挑戦

――小池選手自身、新しいことに挑戦することは小さい頃から好きでしたか。

 「どうですかね……。覚えてないですけど、あまりそういう子どもではなかったと思います。やんちゃはずっとしていましたけど(笑)。何か自分からアクションを起こすというよりは待っているタイプでした。ですが、確実に変わったのはベルギーに挑戦するにあたって、その決断をできたこと。自分の中で大きな変化ではあったと思います」

――一皮むけた瞬間だったということですね。ベルギーでのお話が出ましたが、セカンドキャリアを小池選手が考えるようになった理由の一つとして、所属クラブのロケレンが倒産してしまったことがあったと思います。……

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レノファ山口ロケレン小池龍太柏レイソル横浜F・マリノス

Profile

小口 瑞乃(スポーツ報知)

中学・高校は陸上部で400mハードル専門。同好会でマネージャーを務めた大学卒業後の20年報知新聞社入社。サッカー担当として横浜F・マリノス、年代別代表、なでしこジャパンなどを取材。親の影響で幼い頃からサッカー観戦が日常にあり、好きなポジションはボランチとCB。リフティング最高回数は9回だが運動量には自信あり。

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