今夜19時20分キックオフ! 国立競技場で日本代表と対戦するブラジル代表。カタールW杯南米予選17試合を14勝3分・40得点5失点で首位通過し、FIFAランキングでは4年8カ月ぶりに1位浮上、6月2日の親善試合でも韓国代表を1-5で粉砕と、チッチ監督のチームは絶好調だ。その現状、日本戦の本気度や注目点を、今回もセレソンに帯同し、密着取材を続ける藤原清美さんに解説してもらった。
6月6日、国立競技場で日本対ブラジルの親善試合が行われる。今回のFIFA国際マッチデーは、W杯招集メンバーを決める前の、残りわずか2回のうちの1回のチャンス。そのため、ブラジル代表はすでに報道されている通り、ケガの選手を除いてはベストメンバーが顔をそろえている。
欠くことのできない選手、スタメン争いをしている選手、そこにW杯招集の当落線上の選手、またW杯準備における貴重な機会を使ってでもチッチ監督が手元で確認したかった新人が加わった形だ。
選手たちにとっても、W杯への切符を手にするためのチャンス。みんなが目の色を変えてプレーするはずだ。
「前線の“俊足たち”を生かす」最適解
今回の日本戦でブラジルメディアも注目しているのが、新たな攻撃のカルテット。ラフィーニャ(リーズ)、ルーカス・パケタ(リヨン)、ネイマール(パリ・サンジェルマン)、ビニシウス・ジュニオール(レアル・マドリー)で構成される。今年3月の南米予選でチッチが試したかった形だ。その時はラフィーニャの新型コロナ感染によって断念されたのが、ここでようやく実現する。
カルテットのうち、攻撃的MFのルーカス・パケタはネイマールとのコンビネーションが抜群だ。レアル・マドリーのCL優勝の立役者の一人、ビニシウスは決定力やパスの正確性、守備のサポートとあらゆる面で成長した。ラフィーニャは昨年10月、ブラジル代表で鮮烈なデビュー。特にウルグアイ戦では初スタメンで2ゴールを決めている。
最近、チッチがよく言うのは「前線の“俊足たち”を生かす」という言葉だ。ラフィーニャはこのカルテットについて、こう語っていた。
「監督が俊足と言う通り、僕とビニ(ビニシウス)はスピードが長所。それにドリブルや1対1でのフェイント、シュートの決定力で貢献できる。ネイマールとパケタはより高い技術で貢献している。僕らのチームはそうやって多くのゴールを決めているから、これからもそうであり続けたい」
カルテットが初めての試みであっても、4人はお互いの特徴をわかり合っているから問題ない、と落ち着いて語る様子は頼もしい。
ネイマールはゴールも決める一方で、今は少し引いてプレーし、チャンスメイク、司令塔もこなす。彼と一緒にプレーすれば、若手が適応しやすく成長が早いとまで言われるほど、前線のスピードのある選手たちをより良く生かす役割を果たしている。
もともと最近のブラジル代表で、FWは競争が最も激しいと言われるポジションだ。ネイマールは唯一無二の存在であるとして、他にも続々と成長を遂げた若手や、新たに頭角を現した選手たちが見られる。
レアル・マドリーで急成長を続けるロドリゴ、東京五輪組のアントニー(アヤックス)、マテウス・クーニャ(アトレティコ・マドリー)、マルチネッリ(アーセナル)もA代表に定着してきた。それ以前から出番を得てきたが、東京五輪での得点王も記憶に新しいリシャーリソン(エバートン)は、出れば必ずゴールかアシストで結果を出す。
今や25歳にしてベテランの風格も出てきたガブリエウ・ジェズスもいる。今年、特にプレミアリーグ終盤戦ではマンチェスター・シティでゴールを量産した。昨年はケガで苦しんだフィリペ・コウチーニョ(アストンビラ)も、完全復調をアピールしている。
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Profile
藤原 清美
2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。