1試合平均2.4失点では勝てない……。38試合で勝ち点31、6勝13分19敗・52得点91失点。13年前にはリーグ1優勝、CLでも翌季に8強進出を果たしたジロンダン・ボルドーが、悪夢の最下位で21-22シーズンを終えた。30年ぶりとなる2部降格の背景には何があったのか。
過去6度の1部リーグ優勝。直近では、ローラン・ブランが率いた08-09シーズンにリーグカップとのダブルを成し遂げていたボルドー。クリストフ・デュガリー、ビセンテ・リザラズ、ジネディーヌ・ジダンのフランス代表トリオを擁したチームが95-96シーズンのUEFAカップ(現EL)で決勝進出を果たすなど、濃紺がトレードマークのボルドーは、フランスサッカー史の中で伝統ある強豪クラブという位置づけだった。
しかしその彼らがなんと最下位でシーズンを終え、来季はリーグ2(2部)に降格となる。
優勝争いには絡まずとも、欧州カップ戦出場が狙える5位からトップ10圏内を主戦場としていたボルドーは、1991年に財政難が理由で降格処分を受けたことはあったが、成績で2部に転落するのは1960年以来のことだ。
彼らにいったい、何が起きたのか?
一度は危機を救った、一人のファンと新オーナー
一番の要因は、経営基盤がゆらいだことだ。17-18シーズンを最後に、それまで19年間大株主だったフランスのテレビ局「M6」が撤退。アメリカの投資会社が後を引き継いだが、彼らに長期的プランはなく、金銭的な利益を追求するためだけの投資プロジェクトであることをファンも懸念していた。
その不安は的中し、2019年12月にはクラブがアメリカの別の投資会社「キングストリート」(King Street)に転がされることに。しかしそこでも無計画な運営でますます借金がかさむと、キングストリートは「クラブを支援し、現在および将来に必要な資金を提供することを望まなくなった」と、なんとも無責任な理由で2021年4月に手を引いてしまったのである。
クラブは商業裁判所の保護下に置かれ、財政不安のペナルティにより21-22シーズンは3部のナシオナルに降格、という苦境に直面した。つまり、そもそもボルドーは今季、リーグ1に参戦していない可能性もあったのだ。
そのピンチを救ったのが、前リールの実業家オーナー、ジェラール・ロペスだった。彼がクラブを買い取って救済したのだが、そのいきさつがなかなか面白い。ロペスを口説いたのはなんと、一人の熱狂的なサポーターだった。……
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。