最終節までもつれ込むセリエA優勝争いを制したのはミランだった。5月22日の敵地サッスオーロ戦に0-3で勝利して勝ち点86(26勝8分4敗・69得点31失点)。1月23日の第23節から16戦無敗(11勝5分)、ラストは6連勝で駆け抜け、2ポイント差で宿敵インテルの2連覇を阻止しての戴冠だ。実に2010-11シーズン以来、ファンにとっても待ちわびたスクデット獲得への道のりを、ミラニスタにはおなじみ、nato(@nattou2017)さんに振り返ってもらった。
2021-22シーズンのセリエAは、ミランの11年ぶり19回目の優勝で幕を閉じた。
まず、今シーズンのミランの目標とは何だったのだろうか。ステファノ・ピオーリ監督はシーズン終盤になるまで一貫して「目標は昨シーズンの成績を上回ること」と語っていた。2020-21のセリエAでは24勝7分7敗の勝ち点79で2位。つまり、勝ち点80の大台がターゲットとなったわけだが、2月5日の第24節ミラノダービーで逆転勝ち(1-2)を収めても、その後チームが無敗を継続して順位表のトップに立っても、ピオーリはスクデットという言葉を口にしなかった。
しかし、いよいよ昨シーズンの成績を上回ろうというフェーズに入った時、ピオーリはついに「目標はスクデット」と高らかに宣言した。
全世界のミラニスティとともに
実際、テクニカルディレクター(TD)を務めるパオロ・マルディーニも、エリオット・マネージメントがオーナーに就任した2018年夏、クラブの目標はスクデットではなく、財政面の成長と安定のためCLに連続して出場し続けることだと発言している。そして昨シーズン、8年ぶりにCL圏内復帰を果たし、今シーズンも早々に出場権を獲得。クラブが掲げる長期プロジェクトにおいて第1段階をクリアした。その4月下旬の時点で目標は達成されたわけで、仮に優勝できなくても、今シーズンは成功と言ってよかっただろう。
筆者はCL出場権を確保した段階で、今シーズンの結末がどうなろうと大丈夫、成功だと言い聞かせていた。しかし人間とは欲深いもので、つい最近まで渇望していたはずのCL出場権だけでは満足できない状態になってしまった。
自分は前回のスクデットもリアルタイムで見た世代。その2010-11シーズンのことを鮮明に覚えているわけではないが、当時と比較するとスクデットの味わい方がちょっと違うと思う。
その理由としてSNSの普及が挙げられるだろう。11年前もSNSの利用者自体は多かったが、今ほどサッカー界の選手やクラブ、リーグが率先して情報を公開するような時代ではなかった。それが現在はほぼすべての選手が自ら舞台裏の出来事や自身の心情を発信するようになり、試合直後の雰囲気や、今回で言えば優勝パレードの模様をファンもリアルタイムで共有することができる。
このSNSの発展に関してミランの話をすると、クラブのCEOを務めるイバン・ガジディスの貢献度が計り知れない。ガジディスは2018年冬にアーセナルからミランにやってきたが、プレミアリーグではすでに常識だったクラブの公式アプリすら存在しない当時のミランに愕然したという。
さっそくインタビューでその問題点に言及すると、のちにアプリを開発させて配信が始まり、以降は記者会見やプレシーズンの様子などが見られるようになった。ミランのSNS戦略は様変わりし、どこか殺風景だったコンテンツも色とりどりの鮮やかなものに。今回のスクデットも、試合直後のスタジアムや優勝パレードの模様がクラブの公式YouTubeチャンネルで生配信され、全世界のミラニスティが一体感を持って楽しむことができた。
こんなの他の優勝常連クラブのファンのみなさんからすれば当たり前かもしれないが、いかんせん我われは11シーズンぶりのリーグ優勝。カップ戦を含めてもタイトル奪取の喜びを忘れていた浦島太郎状態なので、何もかもが新鮮なのだ。
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nato
Twitterで主にミランの情報を発信(@nattou2017)。アカウントを通して6割以上のミランのニュース確認ができることを目標にしてます。