前人未到のブンデスリーガ10連覇を遂げたバイエルン。2021-22に就任したユリアン・ナーゲルスマン監督にとっては自身初の主要タイトル獲得であり、喜びもひとしおだったはずだ。だが、指揮官はチームに“変化”の必要性を感じているようだという。ナーゲルスマン自身、そして周囲のリアクションからその理由を考察する。
4月30日のブンデスリーガ第32節で、10シーズン連続リーグ制覇を果たしたばかりのバイエルンは敵地でマインツに敗れた。シュート数でも7対22と大幅に下回り、監督のナーゲルスマンも試合の出来に不満をあらわに。「負けることはあるだろう。だが、負け方が問題だ。最低限の情熱を持って試合に臨むものだと思うが、我われにはそれがなかった」と、試合内容以前の問題だと言い切った。
そうして、「10連覇を達成した直後で、人間だから敗戦もしょうがない。だが、何となく仕事に向かって職務を果たしているだけでしっかりとした情熱も持てないようなら、何かを変えなければならないタイミングだ。そして、我われはその時期に直面している」と続けた。
進まぬ契約交渉…世代交代も停滞?
ドイツ国内の各メディアもこの発言に注目し、本格的に世代交代が進むのではないかと推測している。チームの絶対的なストライカーのロベルト・レバンドフスキは契約延長するのか、キャプテンのマヌエル・ノイアーは現役を続けるのか――世代交代後の新しい顔の一人となるはずだったセルジュ・ニャブリの契約交渉は思うように進まず、トップフォームに戻りつつあったCBニクラス・ジューレはライバルのドルトムントに引き抜かれてしまった。
例年になく選手たちの動向は落ち着かず、来季以降のメンバー構成も定まらない過渡期に差しかかっていることを示している。バイエルンの生え抜きでリバプールなどでもプレーしたディトマール・ハマンもバイエルンのクラブ内の不安定さを感じ取っており、「このタイミングでないなら、いつ他のクラブがタイトルを取るんだ?」とドミニコ・テデスコの下で安定感抜群のサッカーを見せるRBライプツィヒと、来季はドイツ代表のCB2枚(ジューレ、ニコ・シュロッターベック)が並ぶと予想されるドルトムントにチャンスがあると解説した。……
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。