CL敗退直後の国内リーグ戦、パリ・サンジェルマンの本拠パルク・デ・プランスには、自軍がボールを持つたびにブーイングを浴びせるゴール裏サポーターの姿があった。中でも集中砲火を受けた一人がネイマール。翌週の敵地モナコ戦3-0惨敗(3月20日)もあり、ネガティブな報道も相次ぐ状況で、男は24日(対チリ)、29日(対ボリビア)のW杯南米予選に臨む。そんな母国のスーパースター、2月には30歳を迎えたセレソンの絶対的エースを、ブラジルの人々はどう見ているのか。現地在住の沢田啓明さんが伝える。
3月9日にマドリッドで行われた欧州CLラウンド16第2レグのレアル・マドリー対パリ・サンジェルマン(以下PSG)戦は、ネイマールの選手キャリア後半における重大な分岐点となったかもしれない。
ホームでの第1レグ(2月15日)をキリアン・ムバッペの得点で勝利したPSGは、この第2レグも39分、ネイマールからのパスを受けたムバッペが決めて先制。2戦合計2-0として前半を終えた。
ところが、61分にGKジャンルイジ・ドンナルンマの判断ミスから失点すると流れが一変する。76分、78分と続けざまにゴールを奪われ、痛恨の逆転負けを喫して敗退。19-20シーズンの準優勝、昨季のベスト4を経て「今年こそ初優勝を」と意気込むサポーターの期待に応えられなかった。
ゴールを決めても…背番号10への罵声
ネイマールは、昨年11月末のフランス・リーグ1の試合で左足首の靭帯を損傷し、2カ月半の治療、懸命のリハビリを経て2月上旬に復帰。CLラウンド16の第1レグでは後半途中から、第2レグではフル出場した。
プレー内容が、特に悪かったわけではない。しかし、故障の影響と試合勘の不足からコンディションは万全ではなく、先制点をアシストした場面以外では決定的な働きができなかった。メッシも、精彩を欠いた。
試合後、ロッカールームでネイマールがドンナルンマに殴りかかり、チームメイトが押しとどめたという報道もあった(当事者2人は否定)。
この敗戦、敗退によって、それまでも決して良好ではなかったネイマールとメッシの“外様”2人のチーム内での立場は一層悪化したと見られている。
4日後に行われたリーグ1第28節のボルドー戦(○3-0)、2人は試合前の選手紹介で、そして試合中にボールを持つたびに、一部サポーターから痛烈なブーイングを浴びた。ネイマールに至っては、ゴールを決めても罵声を聞いた。
この出来事について、かつてPSGに在籍したロナウジーニョは「サポーターは悲しいんだよ。これだけ偉大な選手たちがいたら、きっと素晴らしい結果を残してくれると信じていたのだから」とコメント。サポーターに一定の理解を示している。
ネイマールはなぜこれほどまでにサポーターから忌み嫌われているのか。このような扱いを受けるのは仕方がないのか、あるいは理不尽なのか。
在籍5季、出場率55%で得点率も年々低下
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Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。