動的配置とバランスに光明。シャビ監督“理想のポジショナルプレー”を考察する
チーム分析から紐解くポジショナルプレー#2
現代サッカーの主流な戦術的アプローチの1つとなっているポジショナルプレー。ただ、採用しているチームであっても実際にピッチ上で実践しているサッカーには差異があり、その実像を理解するのはそう簡単ではない。そんなポジショナルプレーの実像を、具体的なチームの分析を通してらいかーると氏が紐解いていく。第2回はバルセロナ。フィロソフィの体現者シャビの描く理想形とは? アトレティコ・マドリー戦でのパフォーマンスにより、期待感高まるポジショナルプレーの“元祖” の目指す形を追う。
ポジショナルプレーって結局、なんですか?
この問いがなければ、この連載が始まることはなかったでしょう。これに対して、なんとなくでもいいから解答を探していくことがこの連載のゴールとなります。なお、実際のプレーから迫っていくことにこの連載の目的があります。
前回はアヤックスを通じてポジショナルプレーとは何かについて迫っていきました。次はどのチームにしようかと、様々なチームを観察していました。そんな時、目にすることになったのが下記の発言です。
「私たちが実践したいフットボールの方法論についての理解が足りていない。バルサにいるにもかかわらず、ポジショナルプレーを理解できていない選手がいるというのは奇妙なことだ。相手を前から圧迫し、ボールを失った後にもプレスを仕掛け、スペースを攻める。それが私たちの求めることだ」
そうです、僕らのシャビ・エルナンデス監督の発言です。選手時代から試合後の発言で界隈を騒がしてきたシャビですが、監督になってからもそのスタンスは変わらないようです。ただ、ちょっと待てと賢明な読者の方々なら気がつくでしょう。シャビ発言の気になる部分をもう一度抜粋します。
「相手を前から圧迫し、ボールを失った後にもプレスを仕掛け、スペースを攻める。それが私たちの求めることだ」
ボール保持、非保持のいかんにかかわらず、両面の意味を持つような立ち位置が大切だと聞いたことがあります。チーム全員がボールに対して正しい配置を維持できれば、相手のカウンターを容易に許すことはないはず。これはまさに、ポジショナルプレーの考え方のような気がします。抜粋した部分だけを読んでしまうと、「相手陣地での激しいプレッシング→素早い攻守による即時奪回→ショートカウンター」とも解釈できそうですが、重要なのはそれらを可能とするチーム全体の配置、それぞれの立ち位置であり、それを理解していないから「奇妙なことだ」とシャビは叫んだのではないでしょうか。
ただし、この発言がなされたのは12月中旬のことです。あれから時間が経ちました。ポジショナルプレーを知り尽くすシャビに率いられたバルセロナの現在地を知ることで、ポジショナルプレーに迫っていければと考えています。
静的と動的
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Profile
らいかーると
昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。