山場を迎えたW杯最終予選。吉田麻也・冨安健洋という不動のCBコンビを欠いた日本代表の先行きは大いに不安視されていた。代わって入ったのは東京五輪代表だった板倉滉、そしてJリーグ王者・川崎フロンターレのCB谷口彰悟。そしてかつて招集された時には持てなかった武器を携えた谷口は、「いつもどおりの谷口彰悟」を代表のピッチで表現してみせた。
谷口は、最初から「ここ」に懸けていた
Jリーグ最強王者のディフェンスリーダーを侮るなかれ。そんな思いが伝わってくる最終予選だった。
30歳にして初めて臨む最終予選。ピッチに立つ選手の中で唯一、海外でのプレー経験なし。主将の吉田麻也、そして最終ラインの核となっていた冨安健洋が不在の中、かつての同僚・板倉滉とともに重要な2試合でCBのポジションを任されたのが、川崎フロンターレで活躍する谷口彰悟だ。
今回の代表活動が始まる前、いや、昨年の段階から、谷口は2022年のスタートに懸けていた。1月に予定されていた国際親善試合のウズベキスタン戦でのアピールによって代表での地位を高め、W杯に出場する。そのための準備を虎視眈々と進めていた。試合自体は新型コロナウイルスの影響で中止となってしまったものの、変わらず行われた国内組合宿にすべてを懸けた。
国内組だからといって欧州組にすべてが負けているわけではない。むしろ、リーグチャンピオンのCBとしてプライドもある。自分自身が国際レベルでも通用するところを見せないといけない。最終予選の前からメラメラと闘志を燃やしていた。
「やはりW杯はサッカーをやっている人ならば誰しも夢見る舞台。そして、自分が目標とする舞台に近いところにいるのも現状、間違いない。そこを自分のものにするのかしないのかは本当に自分次第。そういった意味で、本当に勝負の1年になると思っている。最終予選のどこでチャンスが回ってくるかはわからないけど、回ってきた時に100%を出したいし、そこで結果を残すことで競争を生んでいきたいと思っています」
普段と同じ谷口がそこにいた
今回のカタールW杯アジア最終予選。中国、そしてサウジアラビアとのホーム2連戦は、日本にとっても勝利が必須な試合だった。そこで谷口は板倉とCBを組む。川崎F時代にはほとんど一緒に組んだことがなかった2人が、最終予選の舞台で共闘する。日本を背負う責任感に加え、主力2人の穴を埋めなければいけないプレッシャーは、我々が想像する以上のものがあったはずだ。……
Profile
林 遼平
1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。