レアンドロ・ダミアンと前田大然が23ゴールでトップに並んだ2021シーズンのJ1得点ランキング。セルティックへ移籍するまでは15ゴールの3位・古橋亨梧も得点王争いに加わり三つ巴の戦いが繰り広げられていたが、彼ら上位3選手の決定力はいかほどだったのか?得点とゴール期待値(xG/Expected Goals)を比較しながら、マッチレビュアーのせこ氏にプレーを分析してもらった。
※ゴール数以外の参照元はWyscout
レアンドロ・ダミアン(得点:23/xG:13.95)
ゴール期待値と実際のゴール数を比較した際にJ1得点ランキング上位3人のうち、最も傾向が見えるのが川崎フロンターレのレアンドロ・ダミアンである。なんと言っても目につくのは9.05というゴール数とゴール期待値の差。すなわち決定力の高さだ。
Wyscoutのデータを見る限り、欧州5大リーグでもこの数字を上回る選手は非常に珍しく、近年でも2018-19シーズンのキリアン・ムバッペ(得点:33/xG:23.44)、リオネル・メッシ(得点:36/xG:23.35)、2019-20シーズンのロベルト・レバンドフスキ(得点:34/xG:24.57)、ティモ・ベルナー(得点:28/xG:19.53)くらいのもの。そのシュートとラストパスの位置や種類、ドリブルの有無、セットプレーやカウンターアタックの分類などから得点が生まれる確率を総合的に算出するゴール期待値の定義を考えれば、2021年のダミアンはシュートチャンスの質に左右されず、効率よく得点を決めているということだろう。
ダミアンの今季の得点を大きく分類すると、見えてくる特徴は2つ。1つは角度のついた位置からのコントロールショットだ。わかりやすいのは第36節セレッソ大阪戦で生まれた2得点だろう。川崎らしい小気味よいパスワークからペナルティエリアの右深くで撃たれたシュートは0.18のゴール期待値だったが、ダミアンはわずかに空いていたファーへダイレクトで正確にボールを蹴り込み、チームに先制弾をもたらしている。
ペナルティエリアへのスルーパスに抜け出して生まれた2点目では、1点目よりもゴールが遠く目の前に相手DFが滑り込んできたせいか、ゴール期待値はさらに低い0.11に留まっていた。それでもダミアンは斜めに走り込みながらうまく助走を取ってコンパクトに右足をスイング。再びダイレクトシュートでニアを破っている。
このハーフスペースからの2得点に代表されるように、ペナルティエリア正面ではない位置からでも精度、強度ともに十分なシュートを打てるダミアン。今季の川崎は外側からCB-SB間を通すような斜めのパスにトライすることが多く、得意とする形でシュートを打てる機会が増えたのも1つの要因だろう。……
Profile
せこ
野球部だった高校時代の2006年、ドイツW杯をきっかけにサッカーにハマる。たまたま目についたアンリがきっかけでそのままアーセナルファンに。その後、川崎フロンターレサポーターの友人の誘いがきっかけで、2012年前後からJリーグも見るように。2018年より趣味でアーセナル、川崎フロンターレを中心にJリーグと欧州サッカーのマッチレビューを書く。サッカーと同じくらい乃木坂46を愛している。