近年のサッカーの進化を促している要素の1つが、トレーニングの充実だ。それぞれが工夫を凝らして様々な手法を生み出したり導入している中、ドイツサッカー界で目立つのがヨガだという。多くのチームや選手が採り入れているというヨガの効用やその背景事情を解説する。
ドイツサッカーに触れていると、トップレベルの選手たちの多くが共通して行っているものが見えてくる。その1つがヨガだ。バイエルンやドイツ代表でキャプテンを務めたフィリップ・ラームや33歳になっても得点を量産し続けるロベルト・レバンドフスキ、35歳でも衰えが見えない守護神のマヌエル・ノイアーと、日常的にヨガを行っている選手たちの顔ぶれが並ぶ。
また、ハンジ・フリックの下で復調を遂げたイェロメ・ボアテンクもヨガとニューロセントリック・トレーニングを取り入れたことが復調の要因だったとクラブ公式のインタビューの中で振り返っている。
ドイツサッカー界では、2005年に当時ドイツ代表監督だったユルゲン・クリンスマンがヨガ講師であるパトリック・ブローメをスタッフの一員に招き入れたことで注目を集めた。とはいえ、サッカー界にヨガ浸透したかといえばいまだに局所的なようだ。2021年の7月に行われた経済誌『ビルトシャフト・ボッへ』内のインタビューでブローメは、一般的にいまだにヨガに対する偏見があることを否定しない。
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それでも、すでに16年にわたってドイツ代表に帯同し試合翌日のリカバリーを担当するブローメによってヨガが必ずメニューに組み込まれていることで、代表レベルのトップアスリートにはヨガが浸透しているようだ。「サッカーは、15年前とはまったく違うものになった。選手はボディビルのような筋肉を作るためにジムに行ったりはしない。選手たちはしなやかな肉体を持ち、細かい筋肉までしっかりと鍛えられている。体だけではなく、考え方もずっと柔軟になっている」と、この15年でのドイツ代表選手たちの変化を説明した。
DFBは、ドイツ女子代表選手のフィットネストレーニングを「ホリスティック(全体論的な)・トレーニング」と位置づけ、ケガの予防や健康面も含めて体全体をトレーニングするものと定義。その中で、3つの要素を軸にしていることが示されている。……
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。