当初はセカンドチームからスタートするはずが、その類稀な能力により先発の座を勝ち取りセンセーショナルなパフォーマンスを披露しているシュツットガルトの伊藤洋輝 。昨季ブンデスリーガをあっと言わせ、現在チームの主将を務める遠藤航が「最近、僕よりも評価が高い」と苦笑いという22歳のDFについて、長年地元紙の『Stuttgarter Zeitung』でシュツットガルト番記者を務め、伊藤の凄さについて訳者の円賀貴子さんに電話をしてきて熱く語ってくれたというマルコ・シューマッハ氏に綴ってもらった。
この年末、伊藤洋輝にゆっくりしている暇はなさそうだ。12月19日に今年最後のブンデスリーガの試合(アウェイでのケルン戦/1-0で敗戦)が行われたが、12月30日には後半戦に向けての準備が始まり、1月8日にはアウェイでのグロイター・フュルト戦という重要な試合が待っている。
非常に早く物事が進んでいくが、伊藤はこの半年間でそれにはとっくに慣れてしまったことだろう。
獲得したSDも驚き
7月にジュビロ磐田からブンデスリーガにやってきた伊藤は、これまでに類を見ないようなスピード感でブンデスリーガ有数のDFへと駆け上がった。ドイツの伝統クラブの一つであるシュツットガルトは当初、彼をまずセカンドチームでプレーさせて、ゆっくり時間をかけてトップチーム入りを目指させるつもりだった。ところが、練習でのパフォーマンスがあまりにも優れていたため、ペレグリーノ・マタラッツォ監督はすぐにトップチームでプレーさせることを決断。今では今シーズンのブンデスリーガでの最大の発見の一人となっている。ファンやクラブ代表者、エキスパートなどから「11月のルーキー」に選出。ドルトムントのドニエル・マレン、フランクフルトのイェスパー・リンドストロムを差し置いてである。
この夏まで、伊藤は欧州でまったくの無名だった。彼を見つけてきたのはシュツットガルトのスポーツディレクター、スベン・ミスリンタート。彼は日本市場に詳しく、すでに2010年、香川真司というのちのスーパースターをJ2で見つけて、ドルトムントに連れてきている(ミスリンタートは当時ドルトムントのスカウトだった)。……