川崎フロンターレの優勝で今季のJ1リーグは終幕。天皇杯は準決勝で敗退となったものの、年間を通して地力の高さを示すシーズンとなった。だが、積み上げた数字や実績から受ける印象ほど平坦なシーズンだったわけではない。主力の移籍も重なり、負傷者にも苦しめられたが、その中で突き抜けてきたモノとは何か。初優勝時から鬼木達監督や選手たちの想いを汲み取ってきた林遼平記者が紐解いた。
カップ戦は惜敗も、5年で4度目のリーグ制覇
コロナ禍によって例年より2チーム多い38試合制で開催された2021年の明治安田生命J1リーグ。そんなシーズンを28勝8分2敗、勝点92で駆け抜けた川崎フロンターレは、誰がどう見ても優勝に値するチームだった。
直近の天皇杯は準決勝で惜敗となり、JリーグYBCルヴァンカップ、AFCチャンピオンズリーグでは、アウェイゴール差とPK戦で敗れた。90分や120分のスコアでは、負けることのないまま大会を後にしている。今年の川崎Fが年間を通じて強いチームであり続けたことに異論は出ないだろう。
ただ、その過程では多種多様な困難と紆余曲折もあり、決して楽なシーズンなどではなかったことも確かだ。
最大の転機となった三笘&田中碧移籍
1年を振り返ると、このチームには大きく分けて二つの顔があった。
一つは圧倒的な攻撃力を誇り対戦相手を破壊していくような強さを見せた前半戦。そしてもう一つは、相手にボールを持たれる展開になったとしても粘り強い守備から最後に勝ち切る勝負強さを披露した後半戦だ。勝ち方に違いはあれど、選手の特徴を生かし、その場に応じてチームの色を変化させて勝星を積み重ねていった。
今年の夏、川崎に大きな変化があった。シーズン序盤からピッチ上で獅子奮迅の活躍を見せていた三笘薫と田中碧が揃って海外へと移籍したのだ。いずれそうなることがわかっていたとはいえ、前半戦のチームを牽引していた二人が一気に抜けたことは、チーム状況を悪化させるのではないか。そんな懸念が持ち上がるのも当然のことだった。
実際、二人が移籍して以降、チームに停滞期があったのは確かだ。リーグ戦ではアビスパ福岡に敗れ、ルヴァンカップとACLでも敗退。二人の移籍に重なるように多くの選手が負傷離脱してしまっていたことも痛手だったが、選手の抜けた状況を跳ね返すだけのパワーをチームとして出せなくなっていたのも事実だった。
このままズルズルいくかもしれない。そうしたネガティブな見方が強まる中、しかしチームは再び上昇気流に乗っていくことになる。その大きな要因となったのが、複数シーズンにわたって積み上げてきたチーム力と鬼木達監督の手腕だった。……
Profile
林 遼平
1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。