ピッチ上で繰り広げられるパフォーマンスの進歩の背景には戦術的な部分はもちろん、トレーニングの進化が不可欠だ。今回はブンデスリーガ1部のマインツが指導者講習会で明かした「エネルギーシステムトレーニング」とはいったいどんなメソッドなのか、講習会に参加した中野吉之伴さんにレポートしてもらう。
去る11月2日(火)、マインツで久しぶりに対面による指導者講習会が開催されたので参加してきた。これはドイツプロコーチ連盟(BDFL)主催のリフレッシュ講習会で、ドイツサッカー協会公認A級またはプロコーチライセンス(日本で言うS級)所得者でBDFLの会員になっている人は誰でも無料で参加することができ、会員以外のA級、プロコーチライセンス所得者やB級ライセンス所得者でも講習会費を支払えば参加できる。
今回はブンデスリーガクラブであるFSVマインツの育成アカデミーが全面協力し、プロチームのフィジカルパフォーマンス部門主任スベン・ヘルツォーク、育成指導者ダイレクターを務めるヤン・ジーベルト、U-23監督バルトシュ・ガウル、U-23コーチのジモン・ペッシュら指導者がプレゼンやデモンストレーションを行ってくれた。ちなみに、ジーベルトは僕がA級ライセンスを所得した時の同期。当時の参加指導者の中でもとびきり有能で、「こういう人がさらに上のレベルで活躍するんだろうな」と思わされるだけのものを見せてくれていた。しかも人間性も最高で、授業後によく一緒にビールを飲みながらいろんな話をしていたのを思い出す。
エネルギー供給システムの理解が不可欠
さて、今回マインツが選んだテーマは《エネルギーシステムトレーニング》。ひと言で言ってしまえば「運動におけるエネルギー供給システムを考慮し、それに合った負荷バランスでできるように状況を整理してトレーニングしましょう」ということになる。
プロチームから育成まで、フィジカルに関することすべてを統括するヘルツォークが説明する。
「大事なのはまず、私たち人間は運動をする時にどのようにしてエネルギーを供給しているのかを知ること。そして、それをもとにクラブとしてどのようなサッカーを目指し、そのためにはどのような能力が必要で、それを高めるためにどのような傾向でトレーニングをした方がいいのかを考えることが大切になると考えています」……
Profile
中野 吉之伴
1977年生まれ。滞独19年。09年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)後、SCフライブルクU-15チームで研修を受ける。現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13監督を務める。15年より帰国時に全国各地でサッカー講習会を開催し、グラスルーツに寄り添った活動を行っている。 17年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)の配信をスタート。