アストンビラは11月11日、成績不振で解任したディーン・スミス(現ノリッチ監督)の後任として、スティーブン・ジェラードの監督就任を発表した。現在41歳の元イングランド代表MFは、リバプールからLAギャラクシー(アメリカ)に移籍した2015年以来のプレミアリーグ帰還となる。2016年末の引退後、リバプールのアカデミーで指導者業をスタートし、レンジャーズ(スコットランド)で評価を高めた指揮官は、目下リーグ戦5連敗中で16位(3勝1分7敗・14得点20失点)と苦しむバーミンガムの古豪を救えるのか。好調ブライトンをホームに迎える11月20日の初戦を前に、そのまだあまり知られていない監督像を、選手時代からジェラードを追い続け、リバプールFCラボでも活動中のゆーりさんに解説してもらった。
“人類のキャプテン”が指揮官としてプレミアリーグへ帰還する。
ワールドクラスのMFとしてリバプールで輝かしい選手キャリアを築いたスティーブン・ジェラードは2018年5月、監督キャリアをスタートさせるクラブにレンジャーズを選んだ。就任当初は指導歴がリバプールU-18のみという青年監督に懐疑的な目が多く向けられていたが、3シーズン目の昨季は32勝6分という圧倒的な強さでリーグ無敗優勝を達成し、セルティックの10連覇を阻止。マージーサイドのレジェンドはグラスゴーの地で自らの手腕を証明し、初監督のスコティッシュリーグで歴史に名を刻んだのだ。彼はレンジャーズに欠けていた戦術的なアイデンティティをもたらし、効果的なリクルート戦略によって悲願のリーグタイトル獲得を実現させた。
そして、スコットランドで栄光を手にした指揮官が次なる目的地に選んだのはイングランドのバーミンガムであった。2024年の夏に契約が終了するユルゲン・クロップの後任として古巣リバプールへの復帰が既定路線と見られていたが、野心家であるジェラードはレンジャーズですべてをやり尽くしたと考え、新たなチャレンジに挑むことを決断。アストンビラでの失敗がリバプール指揮官の座から遠のくことを意味するのは本人も十分に理解しているはずだが、飽くなき向上心を抱くジェラードは監督としてのさらなる経験と成功を追い求め、プレミアリーグへ帰還する道を選択した。
アストンビラに着任した背景には、現在クラブのCEOを務めるクリスティアン・パースローとの繋がりが大きく影響したのは間違いない。彼はかつてリバプールのマネージングディレクターを務めていた人物であり、現役時代のジェラードと苦楽をともにした過去がある。共同オーナーのナセフ・サウィリスとウェス・エデンズの下で働くパースローは、スコットランドで素晴らしい成功を収め、信頼の置けるジェラードに白羽の矢を立てた。
生粋のリーダーが歩んだレンジャーズでの軌跡を振り返り、アストンビラでの未来図を描いてみよう。
グラスゴーでの歩みと基本戦術
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Profile
ゆーり
千葉県出身。都内の大学に通う現役大学生。幼少期の欧州選手権でフェルナンド・トーレスに魅了されたのがキッカケでリバプールを追いかけるように。アカデミー部門にも強い関心を持つ。NBAやF1など多趣味。LFCラボにも執筆中。