カタールワールドカップ出場へ向け勝利が必須のアウェイ2連戦に臨んでいる日本代表。11月10日に行われたベトナム代表戦は0-1で勝利。FIFAランキング上はグループで最も低い(98位)相手との対戦とあって大勝を期待された中での最少得点勝利に批判の声も挙がった一戦について、らいかーると氏が分析する。
サウジアラビア戦から[4-3-3]の雰囲気は漂っていた。[4-2-3-1]を基本としていた日本だがプレッシングがはまらない問題を抱えており、サウジアラビア戦では相手の配置に噛み合わせる形で柴崎岳と鎌田大地がインサイドハーフのように振る舞う場面が見られた。しかし、餅は餅屋。オーストラリア戦では守田英正と田中碧のコンビをインサイドハーフで起用することで、明確な[4-3-3]を志向することになった。絶対に負けられないオーストラリア戦で結果を出したことや、東京五輪から選手の間でささやかれ続けていたボールを保持したい問題に解答を見つけたことは、チームにとって大きなことだった。
その流れを継続するために、ケガによる欠場の酒井宏樹の代わりに山根視来を起用した以外は、オーストラリア戦と同じメンバーがベトナム戦でもスタメンとなった。移動トラブルによる欧州組のコンディション不良が報道されていたが、コンディションよりも同じメンバーを継続して起用することで[4-3-3]のストーリーを進めることを森保一監督は決断したと言えるだろう。
オーストラリア戦を振り返ってみると、相手のDFとMFの間でボールを受ける選手がいなかったことが課題として残っていた。守田と田中は相手のプレッシングを止めること、ボール保持の循環を円滑にする役割を愚直に行っていた。となると、SBかウイングがライン間、もしくはハーフスペースに陣取ることが定跡である。だが、日本のメンバーを見るとそれをできなくないが得意分野からは離れていきそうな構成となっているというのが現実としてあった。
田中の役割変更と守田が直面した困難
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Profile
らいかーると
昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。