名古屋グランパスがセレッソ大阪を2-0で下し、クラブ初の大会制覇を遂げたルヴァンカップ決勝。激闘の勝敗を分けたのはいったい何だったのか。西部謙司さんが振り返る。
マッシモのレシピ
0-0で折り返した後半早々、名古屋グランパスが相馬勇紀の左サイドへの進出からCKを得た。インスイングのボールを相馬が蹴り、ニアポスト前で柿谷曜一朗が頭で薄く当ててゴール前へ、軌道の変わったボールにいち早く反応した前田直輝がヘディングで押し込む。
ここまで主導権を握っていたのはセレッソ大阪だった。立ち上がりを除けばほぼボールを支配して押し込んでいた。ただし、決定機を作れていたわけではない。むしろはるかに手数の少ない名古屋の方が、稲垣祥のミドル、マテウスの突破から柿谷のオーバーヘッドと得点の匂いのする攻撃があった。
後半からC大阪は清武弘嗣を投入している。DFとMFの隙間、中間ポジションで受けての仕事ではJ1でも屈指の清武を入れたのは、名古屋の守備ブロックを崩すための糸口を見出したかったからだろう。C大阪はこじ開けようとしていた。ところが、先制したのは名古屋だったわけだ。
この後も名古屋はC大阪の右サイド深くにボールを送り、相馬と前田を侵入させている。先制点に繋がったCKの時と同じだ。松田陸の背後にスペースを見出していた。2点目も左から侵入したシュヴィルツォクのシュートをGKキム・ジンヒョンが左足に当ててセーブした後のこぼれ球を、稲垣が得意のミドルで叩き込んでいる。この時松田は守備ラインに入っていて、つついたボールがディフレクトしてシュヴィルツォクの前に転がる不運はあった。ただ、左からの攻め込みは同じなので、ある程度狙っていたふしはある。
ただ、この試合での名古屋の勝因は守備だ。……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。