3シーズン続いた霜田体制の後継者として、仙台にポジショナルプレーを導入した渡邉監督を指名したレノファ山口。しかし、同じ「攻撃サッカー」でも両者の間には微妙な差異があったのかもしれない。レノファらしいサッカーとは何なのか?――下部カテゴリー時代からクラブを追い続けるジェイ氏が、岐路に立たされているレノファの現状を総括する。
昨季のコロナ禍によるレギュレーション変更のあおりを受け、今季は4チームが降格となる戦国J2。残留争いは過去最大規模と言っても過言ではない混戦となり、生き残りを懸けた熾烈なバトルが繰り広げられている。
現在最下位の愛媛FCと残留圏となる18位の勝ち点差は3ポイント。さらに15位の大宮までも5ポイント差しかなく、1試合ごとに目まぐるしく天国と地獄が入れ替わる状況だ。そしてサッカーの常として、危機に瀕したクラブは前線指揮官の首を挿げ替える。
残留争い真っただ中の8クラブのうち、すでに6クラブが新監督を迎え入れた。最も遅い6番目となったのがレノファ山口だ。その経緯は他の5クラブとやや異なるが、置かれた危機的状況に変わりはない。
より安全志向に。渡邉体制の「変化」を総括
昨季最下位に終わった山口の再建を託されたのは、およそ6シーズンにわたってベガルタ仙台の指揮を執り、プロビンチャを知り尽くした男、渡邉晋。ポジショナルプレーの使い手として近年注目を集めいていたが、満足いく結果を残せずにシーズン途中で退くこととなった。
シーズンはまだ9試合残っているが、渡邉政権時の山口をまずは振り返ってみたい。退任までの31試合の成績は、8勝8分15敗、27得点に40失点。昨季からの数字の変動としては、失点が減り、そして得点も減った格好だ。では実際の試合の中身はどうか。懐かしの『モダンサッカーの教科書』のフレームワークを使用して、ここまでを振り返ってみたい。
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Profile
ジェイ
1980年生まれ、山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』浦和担当に。footballistaには2018年6月より不定期寄稿。心のクラブはレノファ山口、リーズ・ユナイテッド、アイルランド代表。