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幸せとは、守備をするキエッリーニ

2021.10.11

イングランドとのEURO2020決勝、120分間で見せた守備は偉大そのものだった。36歳を迎え、ケガに苦しみ、今大会の出場さえ危ぶまれていながら、老獪なプレーで何度もチームを絶体絶命のピンチから救い出し、母国を優勝に導いた代表キャプテン、ジョルジョ・キエッリーニ。彼以上に幸せそうに見えるDFはどこにもいない―。イタリアのWEBマガジン『ウルティモ・ウオモ』の編集長が、そのEUROの奮闘を振り返った記事(2021年7月12日公開)を特別掲載する。

フットボリスタ第86号』より掲載

 時計が96分を回り、後半終了まであと40秒となった時点で、イタリアには、オーストリア戦の後半やベルギー戦の終了間際に見られた疲労の色はまったく見られなかった。スペイン戦のように、一方的に押し込まれて耐え忍んでいるという印象もまったくなかった。試合を通してボールを支配し主導権を握って戦う中で、同点に追いつくのに苦労したことは確かだ。しかしここに来てもなお、延長突入を避けるために、あるいはせめて攻勢に立ったまま主審の笛を聞くために、イングランド陣内に押し込んで攻勢に立っていた。

 フェデリコ・ベルナルデスキからのパスを左寄りの位置で受けたエメルソン・パルミエリが、寄せてきたブカヨ・サカのプレッシャーを受け止めてファウルをもらおうと試みるが、逆にボールを失ってしまう。奪ったボールを味方に預けて鋭く反転しタッチライン際を駆け上がるサカに、ジョーダン・ヘンダーソンが浮き球のパスを送り込んだ。これが通ったら大きなピンチだ。だがパスは少し長過ぎ、外に飛び出してきたキエッリーニが先に体を入れて、ボールがタッチラインを割るのを見送る体勢になった。ところがサカは猫のような身のこなしでその脇をすり抜けて前に出る。ハーフウェイラインから5mほどイタリア陣内に入った場所、しかもタッチライン際の出来事であり、ゴールまではまだ遠かった。とはいえ、サカのスピード、そして彼の前に広がっている大きなスペースを考慮すれば、危険なカウンターアタックが発動する可能性は十分にあった。……

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EURO2020イタリア代表ジョルジュ・キエッリーニ

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ウルティモ ウオモ

ダニエレ・マヌシアとティモシー・スモールの2人が共同で創設したイタリア発のまったく新しいWEBマガジン。長文の分析・考察が中心で、テクニカルで専門的な世界と文学的にスポーツを語る世界を一つに統合することを目指す。従来のジャーナリズムにはなかった専門性の高い記事で新たなファン層を開拓し、イタリア国内で高い評価を得ている。媒体名のウルティモ・ウオモは「最後の1人=オフサイドラインの基準となるDF」を意味する。

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